あんなの壊せばいい 83歳養老孟司さんが語る「バカの壁」と老い

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養老孟司さん=東京都新宿区で2018年1月22日、中村琢磨撮影
養老孟司さん=東京都新宿区で2018年1月22日、中村琢磨撮影

 出口の見えない新型コロナウイルス禍で、鬱々とした日々が続いている。重症化しやすいお年寄りにとっては、外出や人とふれ合う機会を奪われ、つらさもひとしおではなかろうか。最近では東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の失言で、「老害」といった心ない言葉まで聞かれる。そんな高齢者に厳しい時代だからこそ、この方の話を聞いてみたくなった。著書「バカの壁」で平成最大級のヒットを生み出し、83歳のいまも筆に講演にと活躍を続ける、解剖学者の養老孟司さんだ。ひょうひょうと、スマートに年を重ねる養老さんの目に、最近の世相はどう映っているのか。近況を尋ねた。【金志尚/統合デジタル取材センター】

 なにしろ相手は誰もが知る大物知識人。少し緊張しながら取材アポを依頼すると、あっさりとOKの返事がメールで来た。年齢を考慮して、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使ったリモート取材を設定する。画面に映った養老さん、黒を基調にしたセーターに身を包み、リラックスした様子だ。テレビや新聞などで見てきたのと変わらぬダンディーな姿。なんだか安心する。

いい方向に向いているんじゃないかな

 さっそくだが、1年以上続くコロナ禍。外出も制限され、昆虫採集や自然散策が好きな養老さんもつらい思いをしているのではないか。尋ねると、「やっぱり人に会うのは控えるようになりましたね」との答え。ただ、表情は暗くない。実はオンラインでしょっちゅう、虫好きの仲間と顔を合わせているという。

 「まあ便利ですよ。僕は毎週、虫が好きな連中とズーム会議やっているんですよ。ラオスに行ったきり帰らないヤツがいるんですが、そういうところにいても毎週顔を見ることができる。今は会いに行こうとしてもえらい大変でしょ。仮に飛行機が飛んでも着いてから半月は(隔離措置で)缶詰めになっていないといけない」

 対面で会っていたときより、むしろ話も弾むようだ。…

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