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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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歌人の俵万智さんにこんな作品がある…

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 歌人の俵万智さんにこんな作品がある。<出ていけと思ったこともあったっけ行ってしまった欅(けやき)のむこう>。教え子が巣立った。時にはぶつかることもあったけれど。先生の感慨がにじむ。俵さんはかつて高校の教壇に立っていた▲学校もコロナに翻弄(ほんろう)された1年だった。部活動ができない期間も長かった。その中で生徒を支えるために、やりとりに工夫を凝らした先生は多い。SNS、手紙、ユーチューブ……。そんな姿を生徒はしっかり見ていたはずだ▲コロナ禍でなくとも、生徒の心をつかむのは難しい。短歌を「武器」にする先生もいる。千葉聡さん。神奈川県の高校教師で歌人である。著書「短歌は最強アイテム」に学園生活が生き生きと描かれている▲国語科準備室の前にある小さな黒板で、お薦めの一首を日々紹介した。最初から生徒の反応があったわけではない。時間をかけて一人一人と向き合ううちに、気持ちが通じるようになった。紹介した短歌は小声で彼らに話しかけるような応援歌に聞こえる。<「まだ」と「もう」点滅している信号に走れ私の中の青春>(松村正直)▲青春は理屈では語れない。高校では来春から、実用的な文章を重視した「論理国語」の授業が始まる。文学軽視になるとの懸念が根強い。青春期にはむしろ文学が「実用的」なのだが▲コロナ禍の中で迎えた惜別の春。先生たちは卒業生にどんな言葉を贈るのだろう。<フォルテとは遠く離れてゆく友に「またね」と叫ぶくらいの強さ>(千葉聡)

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