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コロナ下の地価下落 変化踏まえた街づくりを

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 国土交通省が発表した1月1日時点の公示地価は6年ぶりに下落した。新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きい。

 企業活動や人々の意識の変化が投影され、変動の大きさや方向性は地域や用途によって異なる。

 とりわけ繁華街周辺で急落地点が目立つ。観光や外食の需要が一気に失われたためだ。

 その典型が大阪・ミナミだ。外国人観光客で潤っていた小売りや飲食店が一転して経営難に陥り、不動産の収益が悪化した。商業地の下落率ワースト10のうち、8カ所がこの地域にある。

 観光は経済成長の原動力になり得るとしても、依存しすぎるとリスクがあることを示している。

 テレワークの普及といった働き方の見直しで、都市部の地価に下落圧力がかかった可能性もある。

 本社スペースを縮小する動きが広がる中、東京都心のオフィス需要は弱含んでいる。空室率が右肩上がりの地域もある。

 一方で、都心からアクセスの良い埼玉、千葉、神奈川県の一部では上昇基調を維持している。軽井沢や熱海の別荘地で取引が活発化しているエリアもある。

 在宅勤務に適した住宅を郊外に求めたり、地方への移住やセカンドハウスを志向したりする動きの表れかもしれない。これが広がれば、東京一極集中の是正につながるだろう。

 物流拠点も底堅い。巣ごもり需要で、インターネット通販が増えているためだ。

 収益が悪化したホテルをテレワークやサテライトオフィス向けに改装したり、居酒屋を宅配専業や食堂に転換したりする事業者の工夫も目を引く。

 こうした動きを丁寧に分析すれば、街づくりのヒントが見つかりそうだ。

 今回の下落幅はリーマン・ショック時より小さい。そもそも都市部ではここ数年、不動産取引の過熱感が指摘されており、一時的な調整にとどまる可能性はある。

 ただし、海外の金融緩和マネーに支えられている側面も見逃せない。コロナ禍が長期化すれば、変調も予想される。

 地価には地域の魅力や活力が反映される。社会の変化に対応した土地活用に知恵を絞る時だ。

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