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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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今年は明治初年の岩倉使節団の出発から…

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 今年は明治初年の岩倉使節団の出発から150年に当たる。欧米で先進的な政治制度や都市、産業などを視察した一行は帰国途上、完成して間もないスエズ運河を通過した。明治の元勲たちも大いに刺激されたに違いない▲「近代化の道を探っていた彼らが、日本の技術を借りて高さ70メートルもの橋が建設されたと知ったら、どう感じただろう」。2001年にスエズ運河架橋の完成式典に出席した橋本龍太郎元首相は感慨深げに語った▲「エジプト日本友好橋」の別称もある橋に合わせ、運河を通過する船には高さ68メートル以下の制限がある。長さは400メートルが最大サイズだ。スエズマックスとも呼ばれる。それ以上の大型船はアフリカ最南端の喜望峰迂回(うかい)を迫られる▲まさにスエズマックスの巨大コンテナ船が運河の途中で座礁した。衛星写真では、斜めになった船が幅200メートルの運河を完全に塞いでいた。世界物流の12%が通過する要所だ。通過待ちの渋滞が起き、原油価格が上昇したのも当然だ▲愛媛県の会社が所有し、台湾の海運会社が運航する船は中国広東省深圳からオランダ・ロッテルダムに向かっていた。各国の分業体制とグローバルな流通網で成り立っている今の世界経済を象徴している▲コロナ禍や米中対立で半導体などのサプライチェーン(供給網)に影響が出ている。大動脈の閉塞(へいそく)が重なってはコロナ禍からの経済回復に影響しかねない。運航を正常化させるのは簡単ではなさそうだが、ここは早期の復旧に知恵を絞ってほしい。

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