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漂流の果て

フランス・ドイツ、フクシマが分けた道 原子力と再生エネ、苦悩

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貯蔵用プールに沈められた使用済み核燃料=フランス北西部ラアーグで2021年3月2日午後2時ごろ、久野華代撮影
貯蔵用プールに沈められた使用済み核燃料=フランス北西部ラアーグで2021年3月2日午後2時ごろ、久野華代撮影

 深さ9メートルの水底に、金属製のコンテナが整然と並んでいる。作業デッキからの眺めはスポーツジムのプールのようだが、透明な水は放射性物質で汚染されている。コンテナに収容されているのは、国内外から集まる使用済み核燃料。水面からコンテナ上面までの4メートルの水深が、放射線を遮る。

再編された世界最大の原発企業

 フランス北西部コタンタン半島にあるオラノ社ラアーグ再処理工場。世界各国から送られた使用済み核燃料を再処理し、ウラン、プルトニウムを抽出するフランス唯一の再処理工場だ。これを別の工場で加工したMOX燃料は各国に送り返され、原発で再利用される。

 同社の広報担当者は「この施設は日本やドイツ、オーストラリアなど、世界のあらゆるタイプの使用済み核燃料に対応しています」と語る。だが、2011年の東京電力福島第1原発事故の後、日本などからの発注が減り、フランスのMOX燃料の生産量は19年までに約3割減った。

 敷地内の一角にある巨大な車庫内に、黄色で統一された非常用電源や移動式ポンプ、運搬用のトラックなどが並んでいた。非常用設備の担当者は「自然災害やテロによる事故を想定し、全てはいざというときのためのものです。フクシマの事故は私たちに教訓を与えてくれました」と胸を張った。

 従業員約20万人を擁する原発産業は、フランスの基幹産業だ。中でも地域経済が原発関連施設によって支えられた「原発村」が集中するコタンタン半島では、民間企業の従業員の3分の1がフランス電力(EDF)やオラノ社などの原発関連企業に勤務する。

 オラノの前身のアレバはかつて、世界最大の原発企業として燃料調達から原子炉製造、管理まで一手に引き受けた。だが、福島第1原発事故による世界的な需要の減少などで巨額の負債を抱え込み、仏政府が15年、企業再編に乗り出した。

 仏紙ルモンドによると、2年間で約6000人を削減し、原子炉製造などの部門と、ラアーグ再処理工場を含む核燃料再処理部門などに分離した。18年、原子炉関係部門はEDF傘下のフラマトムに、再処理部門はオラノとなった。当時のアレバ幹部は「フクシマの事故は我々にとって大きな衝撃で、たいへん困難な状況だった」と振り返る。【ラアーグ(フランス北西部)で久野華代】

漂流する政策、日本のよう―フランス

 ラアーグ再処理工場から約15キロ離れたフラマンビル村。海に面したフラマンビル原発には、福島第1原発事故の影響で、10年たった今も完成時期が見えない原子炉がある。2007年に建設が始まり、当初は12年に運転開始予定だった「欧州加圧水型炉(EPR)」だ。

 旅客機の衝突にも耐えるという高い安全性が売り物だが、福島第1原発事故後、フランスの原子炉の安全基準は大幅に厳格化された。追加の安全対策が必要になり、溶接など原子炉の主要部分で欠陥も見つかった。建設費は当初の33億ユーロから124億ユーロまで4倍に膨れ上がり、営業運転は早くて23年中とされる。フランスのルメール経済・財務相は「フランスの原子力の失敗」と断じた。

 仏原子力産業は、地球温暖化への意識の高まりなどから、二酸化炭素をほとんど排出しない原発の価値が見直されることを期待する。だが、既に「フクシマ…

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