新型コロナウイルスの感染対策で、高齢者約3600万人に対するワクチンの優先接種が4月12日から始まる。
供給量が非常に限られる中でのスタートだ。各自治体は接種体制を整えるとともに、住民向けの窓口対応にも当たらなければならない。情報不足で混乱が起きないよう、政府は接種の進め方について基本的な指針を示すべきだ。
高齢者向けに4月中の配布が確実なワクチンは約140万人分で全体の4%弱にとどまる。特に初回は全国でわずか約5万人分だ。
感染状況などに応じた配布ではなく、全都道府県に一斉に配られる。どの市区町村で接種を始めるのか、対応を委ねられた各都道府県は判断に苦慮してきた。
接種業務を担う市区町村では、集団接種を先送りするところがある。クラスター(感染者集団)発生のリスクが高い高齢者施設の入所者から接種を始めるなど計画を見直している。
配布量は5月から増える見込みだ。地域の状況によっては、十分な在庫を確保してから本格的な接種を始めてもよいのではないか。
高齢者向けの配布完了は6月になるという。その後、基礎疾患のある人から一般の人へ対象が広がる。接種期間の長期化は必至だ。
政府はどのような接種計画が効果的なのか、専門家の意見を聞きながら対応する必要がある。ワクチンは今後も海外からの輸入が中心となる。予定通り確保できるように、働きかけを続けるべきだ。
接種に伴う副反応について、厚生労働省の専門部会は「現時点で安全性に重大な懸念はない」と説明している。
それでも、不安を抱いている人は少なくないだろう。できるだけ多くの人が安心して接種を受けられるよう、副反応についての情報を迅速に分かりやすく国民に伝えることが欠かせない。
早ければ5月中に、新たなワクチン2種類の使用が承認される見通しだ。接種の対象者や方法に応じてどう使い分けるのか、政府は早急に考えを示すべきだ。
緊急事態宣言の全面解除に際し、菅義偉首相は感染対策の柱の一つに「安全、迅速なワクチン接種」を挙げた。政府は自治体任せにせず、その役割を果たすべきだ。