米中の攻防は旧ソ連で激化 ウクライナの軍需企業の買収阻止で圧力

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中国の空母「遼寧」はウクライナから購入した艦体を改修した=2018年4月、共同
中国の空母「遼寧」はウクライナから購入した艦体を改修した=2018年4月、共同

 ウクライナ政府が中国企業による航空用エンジン製造企業の買収を阻止するため、同社の国有化に踏み切った。中国はウクライナの軍事技術を次々と購入してきたが、今回の決定の背景には高度な技術流出を懸念する米国の意向が働いたとみられている。

 問題となっているのは、ウクライナの航空用エンジン製造大手「モトール・シーチ」。インタファクス通信によると、株式の約75%を中国企業「北京天驕航空産業投資」(スカイリゾン)や中国人投資家らが取得していたが、ウクライナ国家安全保障国防会議が3月11日、「戦略的重要性」などを理由に国有資産に戻すことを決定。ゼレンスキー大統領が23日に大統領令に署名し、同会議のダニロフ書記は中国側に損失を補償する考えを示している。

 モトール社はソ連時代から軍用の航空機やヘリコプターのエンジンなどを製造。ソ連崩壊後はロシアを主要な取引先としていたが、2014年に自国の南部クリミアが一方的に編入されたことなどを受け、ロシアとの取引が禁止された。

 苦境に陥った同社に投資を進めたのがスカイリゾンで、16年には株式の56%を取得した。しかし、中国に合弁の工場を作る計画が明らかになり、技術流出を警戒するウクライナ当局が買収の経緯について捜査を始め、18年には裁判所が中国側が取得した株式の凍結を命じ、買収計画を停止させた。

 モトール社のエンジン技術が中国側に渡れば、海洋進出を強める南シナ海などでの軍事力増強につながるとの指摘が出ていた。米国はウクライナ政府に売り渡しへの懸念を繰り返し表明。今年1月には米商務省がスカイリゾンを事実上の「中国の国営企業」と名指しして輸出制限の対象に入れると、ウクライナ政府も同月、スカイリゾンなどに制裁を科し圧力を強めていた。

 中国との間で沖縄県・尖閣諸島の問題を抱える日本もモトール社の買収に反対していたとされる。ウクライナのウクルインフォルム通信によると、コルスンスキー駐日大使は3月15日、「日本では私たちの決定が高く評価されている」と語った。

 これまでも中国はウクライナから資金難のため未完成だったソ連製空母を買い取って改修し、12年に中国初の空母「遼寧」を就役させるなど、ソ連に由来する軍事技術の購入を進めてきたといわれ、関係国からの懸念が高まっていた。

 だが、ゼレンスキー政権は米中の板挟みの間で苦しい立場にも置かれている。

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