「復興マネー」消えた8億円を追う ホテル計画頓挫の裏側
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2011年3月の東日本大震災からの復興のため、福島県楢葉町に建設されるはずだったホテルの予定地が、2年以上も空き地のまま放置されている。8億円余りの資金が行方不明になり、計画が頓挫したのだ。背景を取材すると、「復興マネー」に群がる人脈と、翻弄(ほんろう)される被災地の姿が見えてきた。
震災復興にホテル整備を計画
楢葉町役場から約800メートル東にある町中心部のJR竜田駅前。周囲に原発関連企業の社宅が並ぶ中、空き地は白い塀に囲まれ、枯れ草が風に揺られていた。広さは約1万1000平方メートル。一部に建物の基礎工事跡があるものの、土地の大半は地面がむき出しになったままだ。
土地は町有で、町は震災復興を目的にした再開発エリアと位置づけていた。
楢葉町の大半は、約15キロ北側にある東京電力福島第1原発の事故を受け、翌月から立ち入りが禁止される「警戒区域」となった。日中の立ち入りが可能な「避難指示解除準備区域」に区分された後、15年に避難指示が解除された。
町は復興に向けて動いていた。14年、町内の土地の開発計画を定めた「土地利用計画アクションプラン」を策定。住宅や田園が広がっていた竜田駅周辺は、廃炉作業をはじめ、原発に関連して働く人々の拠点となることを見込み、企業宿舎やホテルを誘致・整備することにした。
そこにホテル事業者として名乗りを上げたのが、神奈川県箱根町で老舗温泉旅館を経営する「一の湯」の社長(当時)だった。16年7月、ホテル事業を目的にした会社「ファーストスプリング」を個人で設立する。
当初の計画では、ホテル本体の建設費は約29億円。4階建てで207の客室と温泉を備え、地元住民を雇用するとされた。ファースト社は「地域最大級のホテル事業を行う」とアピール。町が土地を無償で貸し、建設費の4分の3は事業完了後に国が補助することも決まった。
17年3月、松本幸英町長は町議会で「新しい町の拠点となる姿が見えてきた」と述べ、期待を隠さなかった。
資金流用疑惑が浮上 食い違う言い分
工事は17年10月に始まった。しかし、わずか4カ月後にストップする。…
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