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小説「恋ふらむ鳥は」

飛鳥時代の歌人・額田王を主人公に、日本の礎が築かれた変革期の時代を描きます。作・澤田瞳子さん、画・村田涼平さん。

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小説「恋ふらむ鳥は」

/258 澤田瞳子 画 村田涼平

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「兄者の使いだと」

 幄舎(あくしゃ)から飛び出してきた果安(はたやす)は、甲冑(かっちゅう)も大刀も帯びず、衣裙(いくん)だけの軽装である。

 蘇我(そが)の従僕の一人が下馬するなり、果安に書簡を差し出す。果安はそれを一読するや、わずかに遅れて営(いおり)に駆け込んできた漢(あや)や額田(ぬかた)たちをがばと振り返った。その顔には警戒とも恐怖ともつかぬ色が、はっきり浮かんでいる。「なんだ、その面は」と眉を寄せた漢に、果安は大急ぎで首を横に振った。

「い、いえ、その。まさか漢さまや額田どのがお越しになるとは思わなかったもので」

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