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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「足袋を脱ぐ足のほてりや花疲れ」は…

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 「足袋(たび)を脱ぐ足のほてりや花疲れ」は鈴木真砂女(すずき・まさじょ)の句。宴会は禁止という花見で、すっかり歩き疲れた方もおられよう。だがこの「花疲れ」、満開の群桜(ぐんおう)を目の当たりにして圧倒された心のけだるさをも表す▲逼塞(ひっそく)していた人の心身を目覚めさせ、また疲れさせもする春である。今はそんな季節と人の心身の奏でるリズムをかき乱すように割り込むもう一つのサイクルがある。いうまでもなく新型コロナの感染者の増減の「波」のことである▲「第4波に入った」――第3波を抑えた緊急事態宣言が解除されたばかりだが、大阪府の吉村洋文(よしむら・ひろふみ)知事や沖縄県の玉城(たまき)デニー知事からはこんな声が上がっている。宮城県、愛媛県、兵庫県の知事も感染拡大への危機感をあらわにした▲吉村知事は先月の法改正で新設されたマンボウこと「まん延防止等重点措置」を政府に要請する構えだ。緊急事態宣言に至らぬ段階で市町村単位に発動するこのマンボウをめぐる国と自治体の動きが今後の第4波対策の焦点となる▲そのおりもおり、厚生労働省の職員23人が深夜まで送別会をしていたと首相が陳謝する一幕があった。これがコロナ対策の本陣とは情けないかぎりだが、ことほどさように春のいつものリズムに流されがちな宣言解除後の日々である▲花見や歓送迎会はじめ、春の心の弾みをかき乱すコロナの「波」へのうらみは募る。だがその「波」の正体は、少し前の人々の動きそのものにほかならない。この1年間で学んできた苦々しい真実である。

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