記者は「兵隊」? 日常に浸透する戦争用語を考える

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浅間山荘事件で、連合赤軍と警察との攻防を取材する大勢の報道陣=長野県軽井沢町で1972年2月28日、中村太郎撮影
浅間山荘事件で、連合赤軍と警察との攻防を取材する大勢の報道陣=長野県軽井沢町で1972年2月28日、中村太郎撮影

 「兵隊」「遊軍」「1番機」「2番機」……。「え、戦争の話?」と思うかもしれないが、そうではない。今でも立派にマスコミで多用されている業界用語だ。振り返れば、マスコミに限らず「戦略」「兵站(へいたん)」「主砲」と、そもそも戦争に由来する言葉は私たちの日常生活に深く浸透している。戦争用語を使うことをどこまで許容すべきなのだろうか。メディアの一員として考えた。【古川宗、待鳥航志/統合デジタル取材センター】

記者は兵隊?

 「君ら新人は、地方支局に配属されたら、なんて呼ばれるか知っているか? 『兵隊』だよ。新聞社に入ったのなら、軍隊に入隊したと思えよ」

 今から8年ほど前、私(古川)は入社前に会った年配の男性記者から、こんなことを言われた。「えっ、軍隊、今どき?」と首をかしげたが、入社して驚いた。やたらと軍隊用語が使われるからだ。決まった担当を持たずに自由に取材する記者を「遊軍」、チームで取材する際の記者の序列を「1番機」「2番機」、大事件や大災害の時の取材拠点を「前線本部」。いずれの言葉も時代錯誤な気がするが、新聞社では今も当たり前のように使われている。かく言う私たち(古川、待鳥)も、それこそ初任地の地方支局で警察担当の「兵隊」として、一緒に「報道合戦」に「参戦」してきた。ちなみに、知人のテレビ局の報道記者に尋ねたところ、同様に「兵隊」「遊軍」といった業界用語を使っていた。

日露戦争以後に新聞業界に浸透か

 メディアで安易に使われる軍隊用語に長年違和感を抱いていた私たちは、その背景について探ってみた。

 新聞と軍隊の結びつきといえば、新聞が軍の広報紙のようになって戦争に加担した第二次世界大戦の時期が思い浮かぶ。新聞業界に軍隊用語が入ってきたのは、その頃だろうか。

 メディア史が専門の土屋礼子・早稲田大教授に尋ねると、「いやいや、もっと前ではないでしょうか」と首を振った。「あくまで推定ですよ」と前置きして土屋さんは、新聞業界に軍…

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