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余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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価格交渉で最初に示された金額によって…

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 価格交渉で最初に示された金額によって、その後の交渉の値ごろ感が決まってしまう現象を「アンカリング」という。アンカーは船の碇(いかり)で、最初に出た数字が交渉の範囲を限定するアンカーの役割を果たすのだ▲アルプスのモンブランの標高をある人に5000メートル以上かどうか、別の人に4000メートル以上かをまず尋ねる。その後に正しいと思う標高を聞くと、たいがい前の人が初めの質問に引きずられ高い数字を答える。正しくは4810メートルだ▲最初に頭に入り込んだ数字に引きずられてものを考えてしまうアンカリング効果だ。税抜きの価格表示を見て買い物をすると、レジで請求される額の高さに驚くことがあるのもこの心理の影響という▲きょうから商品やサービスの価格は、消費税を含めて表示する「総額表示」が義務化された。7年前の消費税引き上げの際にとられた税抜き表示を認める特別措置が終了し、店頭はもちろんチラシやカタログも総額表示が求められる▲消費者は大方が歓迎という総額表示である。だが事業者が恐れるのは、17年前の総額表示義務化の時のような消費低迷だ。税抜き表示に比べると総額表示の販売量が少ないというデータは多く、やはりアンカリング効果の影響という▲そこで見た目の値段が変わらぬよう実質値下げで応じた業者もいるが、値上げで対応する業者も多いから消費者は喜んでもいられない。結局は総額、税抜き双方の表示を併用する業者も多そうで、消費者はどうか見誤らないようご注意を。

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