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第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月10~29日)の特集サイトです。

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第93回選抜高校野球 東海大相模V 主将欠場、つながる心 少しずつみんなでカバー

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大塚主将のユニホームを持って記念撮影をする東海大相模の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2021年4月1日、藤井達也撮影
大塚主将のユニホームを持って記念撮影をする東海大相模の選手たち=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2021年4月1日、藤井達也撮影

 <2021 第93回センバツ高校野球>

 前回大会が新型コロナウイルスの感染防止のため中止となり、2年ぶりの開催となった第93回選抜高校野球大会。東海大相模(神奈川)が明豊(大分)をサヨナラで降し、10年ぶり3回目の春制覇を果たした。練習もままならないコロナ禍を仲間と共に乗り越え、ここまで来た。春夏の甲子園大会を失った先輩たちの思いも胸に夢舞台で躍動した。

準々決勝から欠場した大塚瑠晏主将=神奈川県相模原市南区で、幾島健太郎撮影
準々決勝から欠場した大塚瑠晏主将=神奈川県相模原市南区で、幾島健太郎撮影

 まさに欠場した大塚瑠晏(るあん)主将(3年)の思いを体現した攻撃だった。同点で迎えた九回裏、東海大相模の先頭打者は不動の遊撃手だった主将の守備位置で先発した深谷謙志郎選手(2年)。3球目をセーフティーバントで三塁線に転がす。ヘッドスライディングで一塁をつかみ取った。

 主将不在となった準々決勝と準決勝を完封した石田隼都(いしたはやと)投手(3年)が堅実に送りバントを決めると、主将代行を務めてきた門馬功(こう)選手(同)に回ってきた。

 気持ちを前面に出し、積極的にバットを振るリードオフマン。主将代行になってからは試合ごとにみなぎるような迫力を身にまとい始めた。この日も1点を先制された後の一回裏、3球目をきれいにセンター前にはじき返した。その後、スクイズで同点となる本塁を踏む。同点に追いついた五回裏、勝ち越しの好機ではその迫力に押されてか申告敬遠された。

 大塚主将が突然の体調不良を訴えたのは準々決勝当日の未明。急性胃腸炎と診断され、欠場し、その後入院することとなった。チームの精神的な支柱であるとともに攻守の要でもある。

 主将代行には門馬副主将が就いたが「一人一人がちょっとずつやっていくのが大事」と意識していた。今チームが掲げてきたスローガン、個人個人の力ではなく、全員が束になって勝ち続けるという思いが込められた「つながる」の実践だった。

 準々決勝の福岡大大濠戦では「自分らしく守備でチームに貢献する」。主将の守備位置を任された深谷選手は落ち着いた守備や甲子園初打席のヒットで貢献。準決勝の天理(奈良)戦では2―0という接戦をみんなで守り抜いた。

 「一人一人がカバーしあい、まとまりができた」と門馬選手。決勝の試合前、主将からLINEで「頼むよ」とメッセージが来た。「絶対日本一を取るよ」と返して臨んだ決勝。

 九回裏、またも申告敬遠された。しかし、主将に代わり2番に起用された綛田小瑛(かせだしょうえい)選手(同)が四球で続き1死満塁。主軸の小島大河選手(同)がサヨナラ打を決めた。全員が主将の思いを背負い戦った。

 試合後、門馬敬治監督(51)は「大塚は病気と闘っている。今日の一戦、大塚も一緒に戦ってくれた。すべての選手で勝利をつかみ取った」とナインをたたえた。閉会式では柴田疾選手(3年)が大塚主将のユニホームを掲げて臨んだ。門馬選手は「主将にささげる気持ちがあった。『日本一になれたよ』と声を掛けたい」。そして目指すは春夏連覇。今度は大塚主将と共に頂点に立つつもりだ。【宮島麻実】

3投手三様のリード 明豊・簑原英明捕手(3年)

野手に指示を出す明豊の簑原英明捕手(3年)=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2021年4月1日、津村豊和撮影 拡大
野手に指示を出す明豊の簑原英明捕手(3年)=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2021年4月1日、津村豊和撮影

 同点で迎えた九回裏1死満塁のピンチ。高めに浮いたボールをはじき返された。遊撃手を襲った打球が外野に抜ける。それを見届けた明豊の簑原英明捕手(3年)は一瞬、悔しそうな表情を浮かべたが、すぐ気を取り直すように足元のキャッチャーマスクを拾い上げた。

 このセンバツで明豊は市和歌山、智弁学園(奈良)、中京大中京(愛知)と優勝候補に挙げられていた強豪を連破した。快進撃の原動力になったのが京本真、太田虎次朗、財原光優(いずれも3年)の3投手。今大会から投手の球数が「1週間500球以内」に制限され多くの学校が神経を使う中、先発もリリーフもできる投手が3人もいるのは明豊の強みだった。

 ただ、3人は投球スタイルも性格も三者三様。特性をつかんで力を引き出すのは容易ではなく、簑原捕手は投手陣とのコミュニケーションに心を砕いてきた。「京本は強気な性格なので逃げの配球はしません。太田はテンポよく投げさせてペースに乗せてやる。財原は強い気持ちを引き出すリードを心がけています」

 そんな相棒役に京本投手は「僕の一番の理解者」、太田投手は「僕の精神状態を見抜いて的確な声かけをしてくれる」、財原投手は「勝負どころで納得できる配球をしてくれる」と全幅の信頼を寄せる。

 決勝の先発は太田投手。簑原捕手は打者にちらりと目をやるとすかさずサインを出し、どんどん投げさせた。太田投手は連投の疲れを感じさせず7回2失点の好投。「ピンチでも落ち着いて投げられた」。太田投手は試合後の取材にそう答え、簑原捕手のリードに感謝した。

 「いつも野球の本を読んでいる」。他の選手らはそう言って舌を巻く。今大会、明豊ナインが強豪に臆せず立ち向かえたのは、そんな簑原捕手が扇の要にいたからだ。「夏は日本一に」。そう語る表情は「次の戦いは始まっている」と言わんばかりだった。【辻本知大】

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