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第103回全国高校野球選手権

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第93回選抜高校野球 決勝 3投手導き、準Vつかむ 明豊・簑原英明捕手(3年)

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野手に指示を出す明豊の簑原英明捕手=阪神甲子園球場で2021年4月1日、津村豊和撮影 拡大
野手に指示を出す明豊の簑原英明捕手=阪神甲子園球場で2021年4月1日、津村豊和撮影

 <2021 第93回センバツ高校野球>

 前回大会が新型コロナウイルスの感染防止のため中止となり、2年ぶりの開催となった第93回選抜高校野球大会。東海大相模(神奈川)が明豊(大分)をサヨナラで降し、10年ぶり3回目の春制覇を果たした。練習もままならないコロナ禍を仲間と共に乗り越え、ここまで来た。春夏の甲子園大会を失った先輩たちの思いも胸に夢舞台で躍動。九回まで互いに一歩も譲らぬ展開に、試合後、スタンドからは惜しみない拍手が両校ナインに送られた。

 同点で迎えた九回裏1死満塁のピンチ。高めに浮いたボールをはじき返された。遊撃手を襲った打球が外野に抜ける。それを見届けた明豊の簑原英明捕手(3年)は腰に手をやって一瞬、悔しそうな表情を浮かべたが、すぐ気を取り直すように足元のキャッチャーマスクを拾い上げた。

 このセンバツで明豊は市和歌山、智弁学園(奈良)、中京大中京(愛知)と優勝候補に挙げられていた強豪を連破した。快進撃の原動力になったのが京本真、太田虎次朗、財原光優(いずれも3年)の3投手。今大会から投手の球数が「1週間500球以内」に制限され多くの学校が神経を使う中、先発もリリーフもできる投手が3人もいるのは明豊の強みだった。

 ただ、3人は投球スタイルも性格も三者三様。それぞれの特性をつかんで力を引き出すのは容易ではなく、簑原捕手は投手陣とのコミュニケーションに心を砕いてきた。「京本は強気な性格なのでこちらも逃げの配球はしません。太田はテンポよく投げさせてペースに乗せてやる。財原は強い気持ちを引き出すリードを心がけています」

 そんな相棒役に京本投手は「僕の一番の理解者」、太田投手は「僕の精神状態を見抜いていつも的確な声かけをしてくれる」、財原投手は「勝負どころで納得できる配球をしてくれる」と全幅の信頼を寄せる。明豊は昨秋の九州地区大会からセンバツまで計8試合で無失策。その中心には野手陣が「守りやすい」と口をそろえるバッテリーの安定感があった。

 決勝の先発は太田投手。簑原捕手は打者にちらりと目をやるとすかさずサインを出し、どんどん投げさせた。リズムに乗った太田投手は連投の疲れを感じさせず7回2失点の好投。「ピンチでも落ち着いて投げられた」。太田投手は試合後の取材にそう答え、簑原捕手のリードに感謝した。

 「体がごついから」。中学時代に捕手を任されたのはそんな単純な理由だった。しかし、自分の差配でゲームを動かせる捕手の面白さに取りつかれてからは理論を磨いた。「いつも野球の本を読んでいる」。他の選手らはそう言って舌を巻く。今大会、明豊ナインが強豪に臆せず立ち向かえたのは、そんな簑原捕手が扇の要にいたからだ。「夏は日本一に」。そう語る表情は「次の戦いは始まっている」と言わんばかりだった。【辻本知大】

総合力、全員が主役 九州勢10年ぶり快挙

 2011年の第83回大会で準優勝した九州国際大付(福岡)以来、九州勢として10年ぶりのセンバツ準優勝を果たした明豊。センバツでは21世紀枠の東播磨(兵庫)に10―9でサヨナラ勝ちした後、次々に接戦を制し強豪を連破した。

 昨年秋、川崎絢平監督(39)が「俺が監督になって史上最弱だ」と突き放したチームはこの春、いかにして飛躍を遂げたのか。昨秋の九州地区大会準決勝で明豊に競り勝ち、センバツにも出場した大崎(長崎)の清水央彦(あきひこ)監督(50)は「当時から質の高いチームだった。チームスタイルはこの春も変わらないが『打つ、投げる、捕る』の全てにおいてレベルアップしていた」とたたえた。

 今大会は川崎監督の采配が的中した場面も多かった。市和歌山との2回戦、同点で迎えた七回にプロ注目の小園健太投手(3年)から決勝打を放ったのは代打に送った竹下聖人選手(2年)だった。智弁学園(奈良)との準々決勝では、2番から1番に上げた幸修也主将(3年)が先頭打者本塁打。大会を通じて3投手の継投も決まり、強豪相手でも大量失点で試合を壊すことがなかった。

 九州地区高校野球連盟の野口敦弘理事長(59)は「川崎監督は選手をよく観察して全員の調子を見極めている。それがチームの総合力になっている」と話す。全員で戦うチームスタイルだからこそ競争も生まれる。「明豊は選手一人一人の目標が高く、よくバットを振る。それが九州王者の風格につながって近年はすごくいい野球をしていた」

 大分県高野連の佐藤直樹理事長(54)も賛辞を送った。「昨秋から一冬越えて打撃が強化されていた。試合ごとにヒーローが代わって、諦めない姿勢が伝わってきた」【中山敦貴、井上和也、河慧琳】

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