入管の外国人長期収容「恣意的ではない」 政府主張は正しいのか
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国連人権理事会の恣意(しい)的拘禁作業部会が、日本で難民申請中の外国人の入管当局による長期収容を「恣意的拘禁で国際法違反」とした意見書を巡り、日本政府側と、外国人らを支援する弁護士グループが激しく対立している。政府は「恣意的拘禁でなく、意見書に事実誤認がある」と主張。弁護士らは「政府の手続きには問題があり、事実誤認もない」と反論する。部会の判断や政府の対応は、米国務省が今年発表の年次報告で言及するなど国際的にも注視されている。現状を報告する。【和田浩明/デジタル報道センター】
国連作業部会「長期収容は恣意的拘禁」
作業部会が昨年秋に出した意見書の対象になったのは、在留資格を失い強制退去命令を受けたクルド人男性とイラン人男性だ。2人とも「母国に帰れば迫害される」と帰国を拒み、難民認定申請を続けている。
2人はこれまで合計4年半~5年間にわたり入管施設に収容され、抗議のハンガーストライキを行うなどしている。2019年夏以降は複数回、2週間という短期間だけ収容を解く「仮放免」後に再収容されており、支持者からは「ハンストで外に出てもすぐ収容されるとの入管による見せしめだ」との非難の声が出ていた。
両者は現在は仮放免中で難民申請手続きを続けている。在日期間は日本人女性と結婚しているクルド人男性が13年以上で、イラン人男性は約30年に及んでいる。
2人は19年秋に日本の入管当局による処遇について作業部会に通報。作業部会は「2人の収容は世界人権宣言や自由権規約に違反し、恣意的なもの」とする意見書を20年8月末に採択した。
この中で作業部会は日本政府に対し、2人への賠償や、権利侵害の調査と責任者への措置、関連法規の見直しなどを要請。さらに「フォローアップ」として要請内容を実施したかどうかに関する情報提供を求めていた。
上川法相「恣意的拘禁にはあたらず」
しかし、上川陽子法相は今年3月30日の記者会見で、この意見書に全面的に反対する姿勢を打ち出した。「我が国の出入国管理制度は適切に運用されている」と述べたうえで、2人の事例は「日本が締結した人権諸条約には抵触せず、恣意的拘禁にあたらない」と強調した。
さらに…
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