トップスイマーを育成せよ 新潟の新天地で研究者が受けた使命
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東京オリンピックの競泳代表選考会となる日本選手権が3日から10日まで、東京アクアティクスセンターで開かれる。男子平泳ぎで五輪2大会連続2冠の北島康介さんを育てた平井伯昌(のりまさ)コーチが率いる東洋大や、名門クラブのイトマン勢らがひしめく中に、青色のジャージーに鍛え上げた体を包んだ「新潟医療福祉大」のスイマーたちがいる。
その時、まさか自分が子供たちにサインをねだられるような選手になるとは思ってもいなかったという。当然、有名人が書くようなサインは考えてもいない。戸惑いながら、自分の氏名を楷書体で書いた。「水沼尚輝」。2019年競泳日本選手権男子100メートルバタフライで優勝。あらゆる競技を通じて、新潟医療福祉大初の世界選手権出場を勝ち取った。
その源は18年前、一人の研究者が先輩から受けた「耳打ち」にさかのぼる。「新潟の大学で新しい学科ができる。教員を探しているらしいぞ」
同大水泳部監督の下山好充(よしみつ)さん(49)は03年、筑波大大学院で博士号(体育科学)を取得した。筑波大水泳部では15年間、選手と指導者として過ごしたが、助手の任期もあとわずか。新たな職場を求めていたところの「耳打ち」だった。
「旅行や合宿で来たことがある程度で、縁もゆかりもない土地でした」
そう振り返る下山さんだが、新潟とは赤い糸でつながっていたのかもしれない。日本海に面する新潟市北区で01年に開学した新潟医療福祉大は、医療や福祉を専門とする総合大学だ。05年春に新たに健康スポーツ学科の新設を計画。同時に、運動部の発足の話も進んでいた。学内の筑波大出身者の推薦もあり、水泳部監督として指導経験豊富な下山さんに白羽の矢が立った。健康スポーツ学科の開設に奔走し…
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