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今を生きる、今を書く

「氷上の哲学者」と呼ばれた町田樹さん。気鋭の研究者として、「アーティスティックスポーツ」を多角的に論じます。

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今読むべき一冊(その1)=町田樹 /7

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国学院大助教の町田樹さん=東京都千代田区で2021年3月21日、佐々木順一撮影
国学院大助教の町田樹さん=東京都千代田区で2021年3月21日、佐々木順一撮影

バーナード・スーツ著「キリギリスの哲学」

 イソップ寓話(ぐうわ)の一つに、誰もが知る「アリとキリギリス」という物語がある。働き者のアリは、夏の間にあくせくと仕事をして越冬のための食料を蓄えるが、その間に遊びほうけたキリギリスは、厳しい冬の環境下で食べ物を探すことができず飢え死にする。これは、勤勉に働くことの重要性を教訓として説く寓話だ。

 今回紹介する著作「キリギリスの哲学――ゲームプレイと理想の人生」(ナカニシヤ出版、2015年)は、イソップ寓話の主人公にして、今まさに死に際に立たされたキリギリスが、自らの人生の正当性を弟子たちに訴える場面から書きはじめられる。原著者は、アメリカの哲学者バーナード・スーツ(Bernard Suits、1925~2007年)。本書「キリギリスの哲学」は、倫理学者である故・川谷茂樹氏と山田貴裕氏による翻訳書である。

 さて、著作の中のキリギリスは、生の理想が「ゲームプレイ」…

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