今読むべき一冊(その1)=町田樹 /7
毎日新聞
2021/4/5 07:00(最終更新 4/5 07:00)
有料記事
1132文字
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

バーナード・スーツ著「キリギリスの哲学」
イソップ寓話(ぐうわ)の一つに、誰もが知る「アリとキリギリス」という物語がある。働き者のアリは、夏の間にあくせくと仕事をして越冬のための食料を蓄えるが、その間に遊びほうけたキリギリスは、厳しい冬の環境下で食べ物を探すことができず飢え死にする。これは、勤勉に働くことの重要性を教訓として説く寓話だ。
今回紹介する著作「キリギリスの哲学――ゲームプレイと理想の人生」(ナカニシヤ出版、2015年)は、イソップ寓話の主人公にして、今まさに死に際に立たされたキリギリスが、自らの人生の正当性を弟子たちに訴える場面から書きはじめられる。原著者は、アメリカの哲学者バーナード・スーツ(Bernard Suits、1925~2007年)。本書「キリギリスの哲学」は、倫理学者である故・川谷茂樹氏と山田貴裕氏による翻訳書である。
さて、著作の中のキリギリスは、生の理想が「ゲームプレイ」…
この記事は有料記事です。
残り726文字(全文1132文字)