広域避難計画に「死角」 原発事故から高齢者、施設入居者どう守る
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東京電力福島第1原発事故を受け、国や関係自治体は原発ごとに原子力災害対策指針などに基づいて広域避難計画の策定を進めており、政府から了承を得たものもある。多くの高齢者らが避難中に亡くなった福島第1原発事故のような悲劇を防げるのだろうか。
寝たきりの人は?避難後のケアは誰が?
老人ホームなどを併設する高齢者施設「であいの郷」(福井県高浜町)は、田畑に囲まれた集落の中に建つ。施設の北側には小高い山があるので望むことはできないが、4キロ先には関西電力高浜原発がある。施設を営む山本勝則さん(67)は福島の原発事故後、講演会を聞きに行くなどして高齢者施設の入所者がどう避難したのか情報を集めた。それでも、原発事故への不安は尽きない。
入所者は79~101歳の18人。寝たきりの人もおり、全員が要介護者だ。2018年8月、高浜原発と大飯原発(福井県おおい町)の同時事故を想定した、国の原子力総合防災訓練に参加した。広域避難計画では、入所者は車で同県敦賀市の施設に避難することになっていた。「普段でも1時間半ほどかかる。原発事故の時、道路は本当に通じるのだろうか」
訓練では、さらに厳しい現実を再認識した。避難した場合の入所者の生活について避難先の施設の職員に尋ねると、思いもよらない答えが返ってきた。「食堂か廊下で生活することになります」。提供されるのは場所だけで、ケアをするのは避難先の職員ではなく、自分たちでやらなければならないという。
原発から放射性物質が飛び散れば職員も自分の家族が心配になる。そんな状況では「一緒に来て」と無理強いはできず、何人が同行するかは分からない。「今のままの計画では、入所者を避難させることはできない」。山本さんはそう感じている。
福島原発事故でも、同じようなことが起きていた。
東日本大震災の時、福島第1原発から約3キロ離れた特別養護老人ホーム「せんだん」(福島県双葉町)は震度6強の揺れに襲われた。ただ津波の影響はなく、鉄筋コンクリート2階建ての施設では電気や水道が使えた。施設長だった岩元善一さん(74)は「寝たきりの入所者のことを考えると、とても避難はさせられない」と考えていた。
ところが、翌日に町長から避難を指示され、従わざるを得なかった。67…
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