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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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古代ローマの元老院議員…

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 古代ローマの元老院議員、小カトーは独特の戦術を得意とした。政敵が提出した議案を葬るため、閉会となる日暮れまで演説を続け、投票を阻止したという。「議論を尽くす」という主張にだれも異論をはさめなかった▲とくにカエサルは何度も憂き目にあっている。長広舌にいら立ち、演説中にもかかわらず投獄するよう命じ、言論封じだと長老らにたしなめられたこともある。戦法はおおむね成功し、小カトーは名声を高めたという▲フィリバスターと呼ばれるこの戦術は、民主主義の礎である言論の自由を体現するものだ。しかし、いまに至るまで議事進行を遅らせる妨害戦術として使われてきたのが実態だ。これを無力化させようとする議論が米上院で熱を帯びている▲フィリバスターを打ち切るには定数100のうち60票が必要だ。与野党の勢力はともに50。野党・共和党が結束してこの戦術を行使すれば、与党・民主党は法案を可決させることができない。そこで浮上したのが60票ラインを大幅に下げる案だ▲「決められない政治」の要因という側面は確かにある。しかし、与党が数の力で押し切るのではなく、野党との妥協点を見いだす努力を促す効用は大きい。与党内にも慎重論があるのは、超党派路線を重視しているからだ▲日本に目を向ければ、虚偽の答弁がまかり通り、疑惑の解明に向き合わず、最後は数の論理を振りかざす寒々しい国会の現状が広がる。機能不全を打開しようとする米国の議論に耳を傾けてはどうか。

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