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米国でアジア系住民への差別が広がっている。社会の分断がさらに深まることを強く懸念する。
昨年春からの新型コロナウイルス感染症の流行が発端だ。中国で最初に確認され米国に広がった。
報告された差別事例は昨年3月からの約1年で約3800件に上るという。被害者の約4割が中国系だ。アジア系への憎悪犯罪が2・5倍に増えたとの調査もある。
韓国系女性ら8人が射殺され、中国系やフィリピン系の高齢者が相次いで襲われるなど、社会を震撼(しんかん)させる事件が相次いでいる。
コロナ禍の不満を罪のないアジア系の人々に向け、傷付けることは、到底許されない。
全米各地で差別反対の集会が開かれている。抗議の声は世界的に著名なアジア系のアスリートやアーティストからもあがった。
にもかかわらず、暴力が止まらないのは、どういうわけか。
米中対立を背景に反中感情が広がっているのは事実だろう。これがアジア系差別を容認するような風潮につながっているなら、極めて憂慮すべき事態だ。
ところが、それを戒めるべき政治家から、あたかも助長するかのような発言が出ている。
下院公聴会では、共和党議員の一人が、暴力的な言動を認めていると受け取られかねない発言をし、物議を醸した。
「中国ウイルス」という表現を使う共和党議員も複数いた。感染拡大のさなかにトランプ前大統領が頻繁に発信したことばだ。
白人至上主義が台頭したトランプ前政権下では、中南米系や黒人など少数派への差別が深刻化し、社会の分断が進んだ。
団結を誓って就任したバイデン大統領は、アジア系差別について「米国に憎悪の居場所はない」と強く非難し、「声をあげ、行動すべきだ」と呼び掛けた。
議会は司法省にアジア系差別を専門に扱う部署を新設する法案を準備している。警察も憎悪犯罪の取り締まりを強化する方針だ。
銃規制問題も改めてクローズアップされ、販売時の厳格な身元調査を求める世論が高まっている。
差別を克服するには、強いリーダーシップが求められる。バイデン氏はこうした新たな動きを積極的に後押しする必要がある。