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デジタル化推進法案 個人情報の保護が前提だ

 経済や社会のデジタル化を推進する法案の国会審議が大詰めを迎えている。菅義偉政権が掲げる看板政策だ。

 デジタル庁の設置を含む新法案5本と、個人情報保護法などの改正案約60本を束ねたものだ。

 9月発足予定のデジタル庁を司令塔に、国と地方が集めた個人データを一元的に管理し、行政サービスの利便性向上を図る狙いがある。民間企業によるデータ活用を促し、新事業の創出も目指す。

 新型コロナウイルス対策では、国民向け給付金を巡り、オンライン申請が混乱した。デジタル化が立ち遅れているのは明らかだ。

 ただ、法案を巡っては、データ活用が優先され、個人情報保護がないがしろにされる懸念がある。

 個人情報保護法改正案は、国や自治体、企業ごとに異なる保護ルールの一本化が柱だ。官民によるデータの共有が容易になり、災害対策などに生かせるという。

 だが、個人情報保護の取り組みで先行した自治体の間では、国や企業を通じた住民情報の漏えいリスクを警戒する声が出ている。

 平井卓也デジタル改革担当相は、政府の個人情報保護委員会の権限を強化して対応するという。しかし、保護委員会の陣容は150人強にとどまる。監督対象が企業に限られる今でさえ十分なチェック機能を果たせていない。対象を行政機関全般に広げて、対応し切れるとは思えない。

 法案にはマイナンバーの利用促進も盛り込まれた。引っ越し時の住民票の移動手続きが簡単になるほか、預金口座とひもづけることで、災害時の給付金などの受け取りがスムーズになるという。マイナンバーカードを健康保険証や運転免許証として利用する仕組みも計画されている。

 だが、政府の拙速な取り組みに現場は追いつけていない。保険証代わりに使う新システムでは、個人番号の登録ミスが相次いだ。利用者の受診歴などが他人に知られる恐れがあった。このため、運用開始が当初の3月下旬から最長で半年後に延期された。

 政府はデータの活用ばかりでなく、個人情報の漏えいや乱用を防ぐ手立てを講じるべきだ。国民の不安を解消できないままでは、デジタル改革は成功しない。

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