- Twitter
- Facebook
- はてなブックマーク
- メール
- リンク
- 印刷
桜の開花時期が近づいてくると、私は毎朝、洗濯物を干しながら山裾の方に目を凝らす。そこには大きな桜の木が1本あって、毎年見事な花を咲かせるのだ。亡くなった夫もいつも楽しみにしていて、「山裾の桜がぼちぼち咲く頃だな」と言っていた。
その桜の枝は、自然に任せて自由に伸びているのだが、全体の姿は美しい舞姫の舞台姿のようだ。おかげで、遠くまで出かけていかなくても、居ながらにしてお花見ができる。
毎年、4月になって何日かすると、その桜も開花する。辺りにピンクの明かりがともったような様子を見ると、「ああ、今年も咲いたな」とうれしくなる。その後の数日は、庭に出るたびに眺めては楽しんでいる。80歳を過ぎた頃からは、「また春が来たね。今年も会えてよかったね」などと語りかけている自分に気づく。
この記事は有料記事です。
残り189文字(全文530文字)