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原発事故が起きて避難する場合、被ばくを避けるために欠かせない情報が「空間の放射線量に関するデータ」だ。どの原発でも観測態勢は確保されつつあるが、住民のために測定結果の評価を誰がどう発信し、伝えるかが曖昧になっている。
公表されなかった予測結果
「あの日は何が何だか分からずに家族と逃げた。避難先で4~5日過ごした後、やって来た消防の人から『ここも危険だから即、逃げてくれ』って言われて。その数日後、自分たちが最初、放射性物質と同じ方向に避難していたと聞いて、びっくりした」。当時暮らしていた福島県浪江町で東京電力福島第1原発事故に遭い、今は同県いわき市に住む渡辺スミエさん(75)は、そう振り返った。
浪江町や同県南相馬市では事故の時、北西方向に広がっていった放射性物質と同じ方角に逃げた住民が多かった。放射性物質の広がりを予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI、スピーディ)の予測結果が、公表されなかったためだ。さらに、事故について調べた国会の事故調査委員会は「スピーディが避難の方向を指示するのは現実に困難」と結論付けた。
このため、政府は「スピーディを避難の決定に使うには不確実」という見解をまとめた。原発の30キロ圏内で暮らす住民が避難する場合、スピーディの予測結果に代わって、道府県などが事故後に原発周辺で観測する実際の空間線量の値が活用されることになった。事故が起きたら、原子炉の状況や放射性物質が広がった方角、空間線量の観測値などから、国が避難する地域を判断する。
空間線量の観測値は、観測地点の地図と併せて原子力規制委員会などのウェブサイトに公表される。しかし、そ…
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