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コロナで切られたメトロレディーの闘い もろい雇用、映画に

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ゼッケンをつけ最後の勤務に就く後呂良子さん=「メトロレディーブルース」から 拡大
ゼッケンをつけ最後の勤務に就く後呂良子さん=「メトロレディーブルース」から

 非正規労働者として労働組合を結成し、10年以上、「同一労働同一賃金」を訴えながら地下鉄の売店で働いてきた女性たちに密着した映画「メトロレディーブルース劇場版」が完成した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で女性や派遣労働者が生活に困窮する状況が顕著になっている。映画の主人公の一人もコロナの影響で雇用延長がかなわなかった。組合の女性たちの闘いを見つめた映画は、コロナが浮かび上がらせた、低賃金で雇用基盤が脆弱(ぜいじゃく)な非正規労働者の問題を活写している。

渋谷で11、13日上映↵

作品について語り合う松原明さん(右)と後呂さん=東京都板橋区で2021年4月1日午後2時、東海林智撮影 拡大
作品について語り合う松原明さん(右)と後呂さん=東京都板橋区で2021年4月1日午後2時、東海林智撮影

 「会社はコロナで人件費削減 私は3月末で失職」

 主人公の一人、東京都内在住の後呂(うしろ)良子さん(66)は2020年3月末、13年間働いた都内の地下鉄売店で、こんなゼッケンをつけて最後の勤務に就いていた。労組が要求し、定年後も本人が希望すれば働ける制度が設けられたが、会社側にコロナの経営へのダメージを理由にされ継続して働けなかった。カメラは最後の勤務日に花束を持って駆けつけた非正規の仲間らとの交流を追いかける。

ストに突入した組合員(前列)ら=「メトロレディーブルース」より 拡大
ストに突入した組合員(前列)ら=「メトロレディーブルース」より

 映画は、労働問題を扱った作品などを多く製作しているビデオプレスの松原明さんと佐々木有美さんの共同監督作品。松原さんは、後呂さんらが13年3月に契約社員の65歳以降の就労を求めてストライキを行ったことをきっかけに密着取材を始めた。「不安定な立場で声を上げるのも難しい非正規の女性がストまでやったことに驚いた。見えない非正規問題の可視化に大きな役割がある」と考えた。

 後呂さんらは、売店で正社員と同じ販売や品物の補充などの仕事をしながら長年働いてきたが、賃金や賞与、退職金などあらゆる労働条件が正社員と違うのは納得できないと「同一労働同一賃金」の実現を訴えていた。松原さんがインターネットで発信した後呂さんらのストライキの報道は、異例の大きな反響を呼んだ。松原さんは「ひどい目にあっている非正規労働者がどれほどいるのかを実感した」と話す。

2013年にストライキに突入した後呂さんら組合のメンバーたち=「メトロレディーブルース」から 拡大
2013年にストライキに突入した後呂さんら組合のメンバーたち=「メトロレディーブルース」から

 後呂さんらは、非正規の契約社員が退職金やボーナスを受け取れないのは法律が禁じる「不合理な格差」だとして待遇格差是正を求め提訴、最高裁まで争い敗訴した。非正規の待遇格差を巡る初の裁判で、多くのメディアが大きく報道した。松原さんは「『同一労働同一賃金』を絵に描いた餅にしないため、彼女たちが何を訴えたのかを追いかけた」と言う。

 仕事を失った後呂さんは退職金もない中、厳しい生活を強いられている。手持ちの金が心細い中、仕事を探すのに交通費も使えず、歩いて仕事を探して回った。現在は、早朝からのマンション清掃と1枚配って5円のポスティングの仕事のダブルワーク。どんなに頑張っても1日7000円前後を稼ぐのが限界。家賃や税金を払うと手元に生活費はほとんど残らない。わずかな蓄えを取り崩しながらなんとか生活している。

 映画は13年のストライキ以降の後呂さんらの活動を丹念に追いかける。その中で、彼女たちが取り組むものが、彼女たちだけのことではなく多くの非正規労働者を苦しめる問題で、日本の雇用制度の根本的な問題点であることを解き明かしてゆく。松原さんは「彼女たちは働く尊厳を守るために声を上げることで変わっていった。コロナ禍であぶり出された雇用の問題点を考えてほしい」と話す。後呂さんは「フルタイムで10年以上働いても非正規には(退職金も)何もないのが現状。黙っていては未来がないということを感じてほしい」と訴えた。

 映画は11日と13日のいずれも午前10時35分からアップリンク渋谷(東京都渋谷区宇田川町)で上映される。問い合わせは同館(03・6825・5503)。【東海林智】

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