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「自分にしか書けない」オウムの犯罪 作家・帚木蓬生さんに聞く

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地下鉄築地駅から地上に出て倒れたサリン中毒症の乗客を、路上で手当てする東京消防庁の救急隊員ら=東京都中央区築地で1995年3月20日、本社ヘリから山下浩一撮影
地下鉄築地駅から地上に出て倒れたサリン中毒症の乗客を、路上で手当てする東京消防庁の救急隊員ら=東京都中央区築地で1995年3月20日、本社ヘリから山下浩一撮影

 オウム真理教による無差別テロ、地下鉄サリン事件から3月20日で26年を迎えた。宗教の名の下に、数々の事件を引き起こし、多数の犠牲者を出したオウム真理教とは何だったのか。作家で精神科医の帚木蓬生(ははきぎほうせい)さん(74)=福岡県中間市=は、その長く多岐にわたるオウムの犯罪をつまびらかにし、現代に問いかける新作小説「沙林(さりん) 偽りの王国」(新潮社)を刊行した。「誰かが総合的、ふかん的に総括しなければいけないと思った。これは『紙碑(しひ)』です」【西部学芸グループ・上村里花】

 「事件を知らない人が増え、2018年の教団元幹部や教祖の死刑執行で事件は終わったこととして忘れられつつある。しかし事件の全貌が解明されたとは言えず、今も後遺症に苦しむ被害者がいる。きちんと記録を残すべきだ」と帚木さんは執筆動機を語る。「これは自分にしか書けない小説だ」

 オウムの犯罪にはサリンをはじめ、さまざまな化学薬品が使われた。信者を洗脳状態に陥らせるための麻薬や化学兵器のサリン、VXガス、イペリットガスのほか、ボツリヌス菌などの生物兵器も研究していたというから驚く。オウムの犯罪を描くには、こうした薬物の専門知識に加え、複雑な犯罪の過程を物語として紡ぐ力、そのどちらが欠けても成り立たない。本書では、精神科医として、教祖・麻原彰晃(しょうこう)(松本智津夫)元死刑囚らが犯罪に至った心理にも踏み込んだ。「自らの経験と知識をフル回転させて完成した」

 小説の主人公は九州大医学部の教授、沢井直…

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