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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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避難車の放射性物質検査場「2カ所で可」 国、21道府県に通知

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島根県原子力防災訓練で、UPZの住民が圏外に避難する際に立ち寄る「避難退域時検査会場」の手順を確認する様子=安来市で2020年10月15日、目野創撮影 拡大
島根県原子力防災訓練で、UPZの住民が圏外に避難する際に立ち寄る「避難退域時検査会場」の手順を確認する様子=安来市で2020年10月15日、目野創撮影

 原発事故が起きた際、避難する車に放射性物質が付いていないかを調べる検査について、内閣府は原発30キロ圏内の21道府県に、検査会場の設営にあたり準備する資機材は、当面2会場分でいいとする通知を出していた。内閣府への取材で判明した。原発の広域避難計画では各道府県で複数の検査会場を想定しているが、2会場だと避難の車が集中し渋滞するのは必至で、計画の実効性が問われそうだ。

迅速・円滑な検査、期待薄

 原発事故に備えた広域避難計画では、事故が起きた時、原発の30キロ圏内で暮らす住民はまず、自宅など建物内にとどまる「屋内退避」をする。ただし、事故の状況や原発からの放射性物質の量により、5キロ圏内の住民や5~30キロ圏の住民が段階的に避難する。

 交通手段は、自家用車や道府県などが準備するバスになる。逃げる途中で、避難先に放射性物質を持ち込まないために、検査会場を通ることになっている。当初は車体だけでなく、運転手と同乗者も汚染されていないか検査することになっていたが、2015年3月、検査に関するマニュアルを変更。運転手らを調べると渋滞が懸念されることから、検査対象が原則車体だけに簡略化された。

 一方、各道府県は検査会場として、あらかじめ数カ所~約50カ所の候補地を決めている。事故の際、飛び散った放射性物質の量や風向きにより避難経路が決まるので、その途中に複数の検査会場を設けようと考えていた。会場では原則、車に2列に並んでもらい、順次検査していく。

 ところが、各原発の広域避難計画の策定を支援する内閣府は20年6月に「21年度を目途に(検査会場で)最低限備えるべき資機材は2会場分」という通知を出した。少なくとも13道府県で会場設営用のテントや椅子、ゴム手袋、無線機など内閣府が示した資機材の必要数がそろっておらず、内閣府は道府県ごとに当面2会場分で整備してもらうしかないと判断した。

 検査を簡略化したのに、設営されるのが各道府県で2会場だけでは迅速で円滑な検査は期待できない。何カ所設営すべきかは事故の状況にもよるので一概には言えないが、内閣府の担当者は「2会場では十分ではない」と認める。ただ「避難計画では、原発30キロ圏内の全ての住民が一斉に避難することは想定していない」と釈明する。

 30キロ圏内の人口は、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)では約94万人、中部電力浜岡原発(静岡県)では約83万人、中国電力島根原発(島根県)では約46万人に上る。

 原子力災害に詳しい東京大総合防災情報研究センターの関谷直也准教授は「さまざまなケースが起こりうると想定して準備するのが、災害への備えだ。最少の備えを求めるだけでは、避難の準備が形式的になってしまっていて問題だ」と指摘している。【荒木涼子、奥山智己】

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