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田中優子の江戸から見ると

法政大総長・田中優子さんのコラム。江戸から見る「東京」を、ものや人、風景から語ります。

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死という到達点

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 退職後の生活が始まった。今までも退任する総長、学長たちと言葉を交わすと、皆ニコニコ顔だった。誰にとっても重責であり、何より極めて忙しいからである。法政大学の総長は理事長と学長を兼ねており、教育に関する会議でも経営に関する会議でも、議長を務める。学長は教育に要する経費がいくらでも欲しい。理事長は収入と支出のバランスを取るために財布のひもを締める。その矛盾した役割を、1人の人間が担うのだ。正月以外に休みは取れない。

 ようやく執筆に戻れることもうれしい。先延ばしにしていた著書のスケジュールが決まり始めている。では、その生活は以前と同じ研究、執筆生活なのかというと、そうではない。総長任期中に母の在宅介護をすることになり、何より私自身が老いた。老いるということがどういうことなのか、介護と自分自身の体調から、よくわかるようになった。

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