「傷だらけの天使」がいた時代/上 ショーケン、生まれたまま ホーン・ユキさん
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大人になる前に寄り道したい場所
ショーケンこと俳優の萩原健一さん(1950~2019年)の三回忌は3月26日だった。追悼するため、本や映画、テレビドラマを見てきた末、この人が飛び抜けて輝いているのは、74年秋から75年春に放送されたテレビドラマ「傷だらけの天使」だと気づいた。チンピラの主人公はいま見ても十分にかっこいい。それまでのヒーローの強さは一切なく、気が小さく臆病で情けないのが魅力なのは、ショーケンならではの味と言える。あのかっこよさは何だったのか。共演俳優たちの証言から、70年代半ばを振り返った。
ショーケンが演じた主人公、オサムは24歳で、水谷豊さん演じる子分、アキラと共に、探偵事務所の下請けでどうにか食いつないでいる。東京・代々木のビルの屋上にある掘っ立て小屋のような所に暮らし、仕事を与えられても自分本位で動き、何かと反抗的な態度で、一波乱起こす。
主人公のボスを演じる岸田今日子さん、岸田森さん(いずれも故人)と共に、探偵事務所の事務員を演じたホーン・ユキさん(70)に、オサムがなぜあれほど魅力的だったのかを聞いた。
「男の子だったら必ず一度は通ってみたいある時期を演じたというか、その後もいろんな俳優が似たドラマで似た役柄を演じていますが、あんなふうにかっこよく見えないのは時代の違いもあると思う。74年当時、テレビ画面の向こう側は自分が暮らすこっち側とは違う夢の世界でしたから、それで成り立っていた面がある。でも、お笑いと、ジャニーズの子たちによって一般庶民がお茶の間と向こう側を行き来できる時代になったから、『傷だらけの天使』のあの役も今なら、もっと軽いものになっていたかもしれないですね」
ショーケン演じるオサムと水谷さん演じるアキラにこんな掛け合いがある。「だからお前はダメなんだよ、中学中退だから」「兄貴はいいよな、中卒だからよお」。このドラマを見ていた小中学生は、学歴のない…
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