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私の体はテレビでできている

早稲田大演劇博物館館長を務める岡室美奈子教授が、過去や現在の、ひょっとしたら未来のドラマの世界も旅しながら、折々のことを語ります。

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私の体はテレビでできている

老いの世界を問うドラマ

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岡室美奈子さん
岡室美奈子さん

 <教授・岡室美奈子の私の体はテレビでできている>

 宮藤官九郎脚本による「俺の家の話」(TBS)は親の介護をめぐる秀逸なドラマで、老いや認知症について深く考えさせられた(以下ネタバレを含む)。

 「俺の家の話」は能楽・観山流宗家の観山寿三郎(西田敏行)と、その息子でプロレスラーの寿一(長瀬智也)を中心とする物語だ。寿三郎は脳梗塞(こうそく)で倒れ自宅で介護されるうち、認知症の症状が出始める。寿一は観山流宗家を継ぐことを決意するのだが、最終回で思いがけない展開となる。寿三郎ではなく、寿一のほうがプロレスの引退試合で死んでしまうのだ。ところが、寿三郎の前に寿一の亡霊が現れる。息子を捜す狂女が息子の亡霊に出会う能「隅田川」の上演に重ねて、父と息子の生と死の境界を超えた対話が温かく描かれ、感動的なエンディングとなった。

 寿一が本当に亡霊となって現れたのか、認知症の寿三郎が見た幻影だったのかは分からない。そもそも亡霊とはそういうものだろう。亡霊はそれを見た人だけのものなのだ。ここで重要なのは、寿三郎が認知症で虚実の境界が曖昧になっていたからこそ、寿一の亡霊に会えたのかもしれないということだ。

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