庵治石プロジェクト10年目の新ブランド「使えるアート」目指し

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庵治石で作られたコースターとキャンドル入れ=「AJI PROJECT」ホームページより 拡大
庵治石で作られたコースターとキャンドル入れ=「AJI PROJECT」ホームページより

 高級石材「庵治(あじ)石」を用いた商品ブランド「AJI PROJECT」が香川県高松市で設立されて10年目を迎えた。職人の高い技術力を生かした雑貨や日用品が人気を集め全国に販路を拡大。材料不足もあって4月からは法人化して新たなブランドに衣替えし、より付加価値の高い商品を展開する。素朴でシンプル、温かい雰囲気を持つ庵治石の魅力を探った。

庵治石の魅力を語る二宮石材の経営者、二宮力さん=高松市牟礼町で2021年3月30日午前11時18分、西本紗保美撮影 拡大
庵治石の魅力を語る二宮石材の経営者、二宮力さん=高松市牟礼町で2021年3月30日午前11時18分、西本紗保美撮影

 高松市北東部、五剣山のふもとにある二宮石材(牟礼町)の工場に灰色の四角い石材が並ぶ。職人が専用のノズルを筆のように操って研磨剤を吹き付け、「とめ」や「はらい」の仕上がりを確認。慎重に字を彫り出し、墓石に仕上げていく。経営する二宮力さん(52)は「庵治石は粒子が細かく、繊細な表現ができる」と魅力を語る。

イサム・ノグチを魅了

「AJI PROJECT」の商品を見つめる二宮石材の二宮力さん(左)と高松市牟礼庵治商工会の平田宗展さん=高松市牟礼町で2021年3月30日午前11時14分、西本紗保美撮影 拡大
「AJI PROJECT」の商品を見つめる二宮石材の二宮力さん(左)と高松市牟礼庵治商工会の平田宗展さん=高松市牟礼町で2021年3月30日午前11時14分、西本紗保美撮影

 牟礼町と隣の庵治町は日本有数の花こう岩の産地として知られ、古くは平安京を築く際にも牟礼の石が使われたという。硬度が高く「花こう岩のダイヤモンド」として墓石などに重用されている。世界的な彫刻家イサム・ノグチもこの石に魅了され、牟礼町にアトリエを構えたほどだ。

 市牟礼庵治商工会によると、最盛期の1950年代は約500社の墓石や灯籠(とうろう)などの加工・製造業者が活躍した。しかし、約20年前から価格が5分の1から10分の1ほどの中国産が台頭し、200社ほどに減少。衰退の危機を感じた商工会の平田宗展・経営指導員(51)は「庵治石の魅力をなんとか広めたい」と考え、国内外に販路を持つ東京のブランディング会社に商品企画を依頼。2012年に「暮らしに寄り添う庵治石」を掲げたブランド「AJI PROJECT」を商工会の補助事業として立ち上げ、地元の13の石材業者が参画した。

 生活雑貨やインテリアに関心が高い女性層をターゲットに据え、ブランディング会社のデザイナーが日常に溶け込むような製品のデザインを提案。材料は墓石などを作る際に余った端材を活用し、価格帯も1万円前後に抑えた。木やガラス製のインテリア、雑貨は多いが、石製品は少ない。差別化が奏功し、ファッションやアパレルの展示会に出品すると、すぐに注文が入った。初年度は100万円ほどだった年間売り上げが現在は1000万円以上となり、20都府県のセレクトショップや雑貨店など約40店舗で取り扱われているほか、カナダや米ニューヨーク、ロサンゼルスなどでも販売されている。二宮石材は現在参画する8社の一つで、墓石の字彫りが専門。二宮さんは「各社とも研磨や彫刻など、それぞれの得意分野を生かしている」と語る。

家紋をイメージしたデザインの庵治石製豆皿=「AJI PROJECT」ホームページより 拡大
家紋をイメージしたデザインの庵治石製豆皿=「AJI PROJECT」ホームページより

大量納品求められ製造コスト上昇

 ただ、市場開拓は課題にも直面した。同ブランドの商品は1点ずつ職人が石から削り出すなど手間が掛かるが、知名度が増すにつれ「100個ならいくら?」などと買い手から大量納品を求められるようになった。また、墓石のニーズが減って材料を調達しにくくなり、原石を自ら掘り出す必要に迫られ、製造コストが上昇。二宮さんは「この地域は石材の高い技術を持つ職人が辞めたり、アルバイトをしないと生活できなかったりする状況。大量生産の工業製品ではなく、『使えるアート』として価値を認めてもらいたい」と強く感じるようになった。

 そこで、二宮さんは3月31日に「蒼島(あおいしま)」を設立。社長に就任し、事業を商工会から引き継いだ。現在約200点ある商品を50点ほどに絞り、多くの職人たちに利益を還元するため価格を上げるなどブランドを一新する予定だ。商工会の平田さんは「商工会の補助事業は一過性で終わる事例も多いが、今回は地元ビジネスの創出につなげることができた」と発展を期待する。

 蒼島は地元の石材業者と連携し、高松北高校の生徒が考案した置き時計など新商品の開発や地元の観光振興といった幅広い事業展開を見込む。二宮さんは「これまでより多くの職人たちがチームとなり、石と言えば『庵治石』と覚えてもらえるよう、国内外に魅力を発信していきたい」と意気込んでいる。【西本紗保美】

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