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小説「恋ふらむ鳥は」

飛鳥時代の歌人・額田王を主人公に、日本の礎が築かれた変革期の時代を描きます。作・澤田瞳子さん、画・村田涼平さん。

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小説「恋ふらむ鳥は」

/265 澤田瞳子 画 村田涼平

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 怪訝(けげん)そうに果安(はたやす)が顔を上げるや、赤兄(あかえ)は広縁から走り寄り、その頰を平手で張った。

「な、何卒(なにとぞ)お許しくだされ、兄上。矢国(やくに)に欺かれたのは、わたしも同じなのです」

「漢(あや)さまは矢傷が元で身まかられたぞッ。矢国めが裏切ったのは、おぬしが起こした騒ぎを目にし、愛想を尽かしたに違いあるまいッ。いかなる理由があろうとも、配下の将を見捨てると言い放つ将軍に誰が付いてくる。そういうことは露見せぬように計らうものだッ」

 果安の下顎(したあご)が、支えを失ったように落ちる。赤兄はその首根っこを捕らえて地面に押さえつけ、大友(おおとも)に向かって叩頭(こうとう)した。

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