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怪訝(けげん)そうに果安(はたやす)が顔を上げるや、赤兄(あかえ)は広縁から走り寄り、その頰を平手で張った。
「な、何卒(なにとぞ)お許しくだされ、兄上。矢国(やくに)に欺かれたのは、わたしも同じなのです」
「漢(あや)さまは矢傷が元で身まかられたぞッ。矢国めが裏切ったのは、おぬしが起こした騒ぎを目にし、愛想を尽かしたに違いあるまいッ。いかなる理由があろうとも、配下の将を見捨てると言い放つ将軍に誰が付いてくる。そういうことは露見せぬように計らうものだッ」
果安の下顎(したあご)が、支えを失ったように落ちる。赤兄はその首根っこを捕らえて地面に押さえつけ、大友(おおとも)に向かって叩頭(こうとう)した。
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