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余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「あかい椿がさいていた…

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 「あかい椿(つばき)がさいていた/郵便局がなつかしい/いつもすがって雲を見た/黒い御門がなつかしい/ちいさな白い前かけに/あかい椿をひろっては/郵便さんに笑われた/いつかのあの日がなつかしい」▲「あかい椿は伐(き)られたし/黒い御門もこわされて/ペンキの匂(にお)うあたらしい/郵便局がたちました」(金子(かねこ)みすゞ「郵便局の椿」=句読点は略)。郵政民営化のおり、小欄はこの詩を引き「あたらしい郵便局」の未来に思いをはせた▲残念ながら今日、ペンキの匂いの消えた郵便局では、保険の不適切販売ばかりか局員の横領や窃取など、耳を疑う不祥事が絶えない。今度は長崎市内の元郵便局長が顧客から10億円を超える金をだまし取っていた疑いが明るみに出た▲日本郵便の発表によると、60代のこの人物は25年前の局長就任直後から高利率の特別の貯金があると顧客に持ちかけ、50人以上から現金を詐取していたという。金は遊興費に使い、一部は顧客に返済して発覚を遅らせてきたらしい▲「お恥ずかしくお粗末な限り」。これは今年1月に局の管理職による横領、窃取の絶えぬ現状をわびた日本郵政の増田寛也(ますだ・ひろや)社長の言葉だ。昨年1年の横領や窃取は21件3・7億円、うち2億円以上が局長など管理職によるものだった▲一般企業では考えられない不正のまん延である。半官半民の病弊といえばそうだろうが、単に官と民の悪いところを合わせてもこうはなるまい。今でも数は圧倒的に多かろうまっとうな「郵便さん」が気の毒だ。

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