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国産ワクチンの遅れ 中長期的な戦略が必要だ

 新型コロナウイルス対策で、政府が初めて緊急事態宣言を出してから1年が過ぎた。収束のめどが立たないばかりか、大阪で感染者が急増するなど、「第4波」への懸念が高まっている。

 対策の切り札とされるワクチンは、来週から高齢者への接種が始まるが、国民全体へ行き渡る見通しは示されていない。供給を輸入に頼っているためだ。

 世界では、ワクチン製造企業を擁する国で接種率が高い傾向がみられる。日本の接種率は1%に満たない。国内企業も開発に取り組んでいるが周回遅れだ。

 ワクチンは、パンデミック(世界的大流行)対策に欠かせない。だが、各国による争奪戦が激しさを増す中、海外頼みではおぼつかない。

 政府は、国内でのワクチンの開発を支えるために中長期的な戦略を立てる必要がある。

 2009年に流行した新型インフルエンザの際も、国産ワクチンの開発や供給が遅れた。政府の有識者会議は翌年、「可及的速やかに国民全員分を確保するため、製造業者を支援し、生産体制を強化すべきだ」と求める報告書をまとめた。

 しかし、その後もメーカー任せの状況は変わることはなく、具体的な国家戦略が示されることはなかった。

 一方、海外では官民協調の研究開発が進んだ。その蓄積が新型コロナワクチンに生かされ、迅速な実用化につながった。

 グローバル化の進展で、感染症拡大のリスクは年々高まっている。政府は、ワクチン開発を重要政策と位置づけ、将来にわたって研究や生産を支援していく環境を整備すべきだ。

 日本のワクチン開発が遅れた背景には、副反応が社会問題化した歴史がある。このため国民の不信や不安は根強い。公衆衛生上の重要性とリスクとを丁寧に伝えることも求められる。

 当面は、新型コロナワクチンの供給量の確保に努めるとともに、接種を着実に進め、副反応などの情報も公開していくことが大切だ。そのうえで、今回の教訓を生かし、安全で安定した国産ワクチンの提供体制の構築に乗り出さなければならない。

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