大麻摘発、4年連続で最多 目立つ20代 「害ない」広がる誤認

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警察庁、国家公安委員会などが入る中央合同庁舎第2号館=東京・霞が関で2019年、本橋和夫撮影 拡大
警察庁、国家公安委員会などが入る中央合同庁舎第2号館=東京・霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 全国の警察が2020年に大麻を所持したなどとして摘発(逮捕・書類送検)したのは前年比713人増の5034人で、4年連続で過去最多を更新した。警察庁が8日発表した。特に20代以下の増加が目立ち、全体の68・1%を占めた。同庁は「『海外の一部では合法化されているから大麻は有害ではない』との誤った認識がインターネットで広がっていることなどが背景にある」とみている。

 年代別では、20代が前年比590人増の2540人で最も多かった。20歳未満の未成年は同278人増の887人で過去最多となり、4年で4・2倍に増えた。学生別でみると、大学生が同87人増の219人で高校生は同50人増の159人。中学生は同2人増の8人で、最年少は14歳だった。

 警察庁が20年秋に大麻取締法違反(単純所持)容疑で摘発した748人を分析したところ、覚醒剤の有害性は80・4%が認識していたのに対し、大麻は16・7%にとどまった。有害性を軽視する情報源は「友人・知人」が42・6%と最多。年齢層が低いほどその割合が高くなっており、同庁は「若年層は身近な環境に影響されやすい傾向がみられる」とする。

 ネット交流サービス(SNS)で「野菜」(大麻)や「手押し」(対面取引)などの隠語を使って取引され、入手しやすくなっている面もある。乾燥大麻1グラムの末端価格は6000円で、覚醒剤の6万円と比べて安価なことも若者への使用が広がる背景にあるとみられる。

シンナーから移行

 「昔から若い人は暇をつぶせるもの、気持ちが楽になるものを求めてきた。以前はシンナーだったが、『不良が吸う格好悪いもの』とみられるようになり、大麻に置き換わった」

 大麻乱用の若者への拡大について、薬物などの依存症患者を治療する神奈川県立精神医療センター副院長の小林桜児医師は説明する。2014年の危険ドラッグの規制強化も大麻への移行を強めたとみる。

 その上で小林医師は「乱用は普通の生活をしているように見える若者にも広がっている」と指摘する。背景として着目するのが「若者の孤立」だ。経済的には満たされているが、親や友人など身近な人と気持ちを共有し合うコミュニケーションが少ない若者は、「心の隙間(すきま)」を薬物で埋めようとして乱用に陥りやすい面があるという。

大麻事件の摘発人数の推移 拡大
大麻事件の摘発人数の推移

 これまで診察してきた依存症患者の多くは薬物を使い始めた理由を「なんとなく」や「たまたま誘われて」と説明する。だが、よく話を聞くと家庭環境や受験の失敗などから孤立感を深めた状況だったことも少なくない。

 小林医師は「犯罪など本人が何らかの行動を起こすには必ず理由がある。『意志を強く持て』と言っても解決しない。乱用者が抱える孤独を知ったうえで支援することが重要」とする。

 知人らから大麻の使用を誘われた時はどうすればいいか。精神疾患を抱えた親とその子どもを支援するNPO法人「ぷるすあるは」(さいたま市)の細尾ちあきさんは「まずはその場から離れて」と訴える。

 細尾さんは精神科の看護師の資格を持ち、依存症からの社会復帰を支える施設「ダルク」で非常勤として働く。そこでは「先輩に誘われて断り切れなかった」と話す若者もいるという。細尾さんは「仲間を失うのではないかなどと考えるので、きっぱり断るのは難しい。でも、うそでもいいから『用事があった』などと言って、その場を立ち去る選択肢があることを若者に伝えたい」と強調する。【町田徳丈】

相談窓口

・全国精神保健福祉センター(一覧)

 https://www.zmhwc.jp/centerlist.html

・薬物依存者のための民間自助団体「日本ダルク」

 http://darc-ic.com/

・全国薬物依存症者家族会連合会

 http://www.yakkaren.com/

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