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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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ぜんまい仕掛けで弓を引いて的に当てる…

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 ぜんまい仕掛けで弓を引いて的に当てる「弓曳童子(ゆみひきどうじ)」や筆で文字を書く「文字書き人形」。「からくり儀右衛門(ぎえもん)」といわれた田中久重(たなか・ひさしげ)のからくり人形だ。なめらかな動きには現代人も驚かされる。福岡出身の田中は明治維新後、上京して芝浦製作所を設立した▲発明家の田中は「東洋のエジソン」と呼ばれる。一方、白熱電球の国産化を成功させ、「日本のエジソン」の異名を持つのが藤岡市助(ふじおか・いちすけ)だ。藤岡が創業した東京電気と芝浦製作所が1939年に対等合併し、東芝が生まれた。東芝が日本のモノづくりに重要な役割を果たしてきたのは必然だったろう▲その東芝が中韓の台頭に加え、不正会計の発覚など企業ガバナンスの失敗で経営を悪化させた。白物家電やテレビはブランドごと中国資本の傘下に入り、稼ぎ頭だった半導体も売却された。ようやく東証1部に復帰したところで、今度は買収話だ▲社長の古巣である英ファンドの提案で「物言う株主」からの企業防衛が狙いともいわれる。原発技術を持つ重要企業の買収を国が了承するかも予断を許さない。それでも日本を代表する企業の買収が取り沙汰されること自体、時代の大きな変化だ▲2兆円超とされる買収額は今や巨額ともいえまい。アマゾンの創業者、ベゾス氏の個人資産は19兆円を超え、アップルなど巨大IT企業の株式時価総額は数十兆から200兆円に達する▲「縮小する日本」のお値打ち企業が海外企業のターゲットになる時代を象徴してはいないか。気がかりな点だ。

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