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学術会議の見直し案 任命拒否問題が未解決だ

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 日本学術会議が、政府の要請を受けて進めていた組織改革の素案を公表した。

 政府と自民党は、政府機関から独立した形態を検討するよう求めていた。だが、国を代表する学術機関として現在の形が最も望ましいと結論付けた。政府はその内容を尊重すべきだ。

 政府が学術会議の改革を求めたのは、菅義偉首相が昨年秋に学術会議の会員候補6人を任命しなかったことが問題化した後だ。世論の批判をかわすための論点すり替えと指摘された。

 学術会議は任命を再三求めてきたが、半年たった今も首相は応じていない。

 人文・社会科学系の部会は約1割が空席のままだ。欠員が続けば、政策提言などをとりまとめる活動に影響が出かねない。

 このため、学術会議は6人のうち5人を、首相の任命が必要ない連携会員や特任連携会員とすることにした。

 会員への任命が見通せない中での苦肉の策だ。暫定的な措置であり、学術会議は引き続き6人の任命を求めていくという。

 根本的な問題は依然として解決されていない。

 任命を拒否された加藤陽子東京大教授は、その事実と経緯を「歴史に刻むために」、特任連携会員への就任を希望しなかった。連携会員として参加することになったメンバーも、任命拒否問題が置き去りにされていることに違和感を訴えているという。

 学術会議は政府の要請に応えた。次は首相が応える番だ。

 学術会議の設置法は、会員を「会議の推薦に基づいて首相が任命する」と定めている。6人もの欠員が出ている不正常な状態を解消する責任が首相にはある。

 首相は当初、任命拒否について「総合的、俯瞰(ふかん)的観点からの判断」と繰り返した。テレビ番組で追及されると「説明できることとできないことがある」と開き直った。そもそも国民に説明できないようなことはすべきではない。

 学術会議の活動を正常に戻さなければ、国の損失につながりかねない。任命を拒否した具体的な理由を示さず、異常な状態を放置し続けることは許されない。首相は直ちに6人を任命すべきだ。

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