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村上陽一郎・評 『ワクチン いかに決断するか』=R・E・ニュースタット、H・V・ファインバーグ著

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『ワウチン いかに決断するか 1976年米国リスク管理の教訓』
『ワウチン いかに決断するか 1976年米国リスク管理の教訓』

 ◆『ワクチン いかに決断するか』=R・E・ニュースタット、H・V・ファインバーグ著、西村秀一・訳

 (藤原書店・3960円)

正解のない事態を検証する

 本書のタイトルと著者たち(それに訳者)の名前だけをみて、おや、さすがあの二人、コロナ禍についてもいち早く何らかの報告書を出版したのか、と思い込んで、開いてみたら、コロナ禍とは直接は無関係の一九八〇年代に書かれた書物の再翻訳だった。今これを世に問う書肆(しょし)の、鋭敏な時代感覚というべきか、商売上手というべきか。原著は昔感心して読んだ覚えがある。念のために付け加えるが、原著のタイトルは「決して起こらなかった流行」とでも訳せるものであった。ただ、言うまでもないが、訳者による詳細な解説には、今この書を出版する意義と、パンデミック化したCOVID19との切実な関わりについても、当然ながらきちんと述べられている。

 大筋を追っておこう。ことは、一九七六年のアメリカに始まる。豚インフルエンザ由来のウイルスによって、陸軍基地の兵士に感染患者(死亡)が出たために、これが全土に広がり、ひいては、世界中に蔓延(まんえん)する――つまりパンデミックになる――ことを恐れたアメリカ政府(フォード政権)は、直ちにワクチンの開発、接種の全国民への普及活動という、思い切った政策に踏み切った。実際始まって三か月も経(た)たないうち…

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