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還暦記者・鈴木琢磨の、ああコロナブルー 旅の危機、芭蕉を思う 「点と線」生んだ95歳の紀行作家

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「まだまだ旅には出たいですよ」と語る岡田喜秋さん=西東京市で2021年4月4日、鈴木琢磨撮影
「まだまだ旅には出たいですよ」と語る岡田喜秋さん=西東京市で2021年4月4日、鈴木琢磨撮影

 そういえば、しばらく旅をしていないなあ。コロナ禍で旅への思いが募っていたからか、図書館で紀行作家、岡田喜秋(おかだきしゅう)さんのエッセー集「旅に生きて八十八年」(河出書房新社)が目に留まった。2014年の発行とあるから、ご存命ならとうに卒寿を超えているはず。東京の下町・深川の人ながら、信州のアルプスにあこがれ、旧制松本高校に進み、さらに芭蕉の「奥の細道」にひかれ東北大に学んだらしい。そして旅行雑誌「旅」編集部で、かの松本清張さんの傑作推理小説「点と線」を世に送り出す。清張さんがわがまち練馬区上石神井に住んでいた頃だ。なおさら興味がわいた。

 岡田さんはすぐ隣の西東京市にご健在だった。大正15(1926)年生まれの95歳、背筋はぴんと伸び、顔のつやもすこぶるいい。「補聴器の世話にはなっていますが、登山のおかげか体は丈夫でしてね。晩酌も欠かしていません。黄桜の『辛口一献』。うまいねえ」。現在も交通新聞に「反射板」という旅コラムを隔月連載している。「もう20年以上になるかな。原稿用紙に鉛筆で書いたものをパソコンで打ち、編集部へ郵送しているんです」。コロナで「不要不急」の外出自粛が求められ、旅もどこか日陰者扱いだ。「山登りをお勧めしたい。仲間と一緒でも、山道に入れば一列になって結局、ひとりです。人間が思索的になる。いまも息切れしない程度の山なら登りたいね」

 老いても消えぬ旅心、その炎は戦争のまっただ中で青春を過ごした体験からだろうか。「信州では学徒出陣で、あすはわが身かの心境でした。山を見上げても、…

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