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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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震災語り部の10年を記録映画に 名古屋の学生、先輩から引き継ぎ

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旧大川小を舞台にドキュメンタリーを作った(前列左から)西川采実さん、宇治原千尋さん、光田早耶香さんと栃窪優二教授=名古屋市千種区の椙山女学園大で2021年4月9日午後0時17分、川瀬慎一朗撮影 拡大
旧大川小を舞台にドキュメンタリーを作った(前列左から)西川采実さん、宇治原千尋さん、光田早耶香さんと栃窪優二教授=名古屋市千種区の椙山女学園大で2021年4月9日午後0時17分、川瀬慎一朗撮影

 椙山女学園大(名古屋市千種区)の栃窪優二教授(映像ジャーナリズム論)のゼミ生10人が、東日本大震災の被災者遺族の10年に迫ったドキュメンタリー作品を完成させた。歴代のゼミ生たちが10年にわたって取材した映像や最新の映像を編集した記録だ。震災による津波で児童・教職員84人が犠牲になった宮城県石巻市の旧大川小の記憶を語り継ごうと活動を続ける「大川伝承の会」共同代表の佐藤敏郎さん(57)に密着。新型コロナウイルス禍の中、紆余(うよ)曲折を経て完成にこぎ着けた学生らは「佐藤さんの思いを知ってもらい、防災に役立ててほしい」と呼びかけている。【川瀬慎一朗】

 栃窪教授は、元民放テレビ記者で、石巻市での勤務経験もある。震災翌月の2011年4月から年数回、同市を訪ね、延べ100日以上取材。ゼミではこれまでに、現場の映像を毎回5分にまとめた「震災シリーズ」など計100本以上被災地の様子を伝える作品を制作し、動画投稿サイトで公開してきた。

学生の取材に佐藤敏郎さんが震災への思いを語る作品の一場面 拡大
学生の取材に佐藤敏郎さんが震災への思いを語る作品の一場面

 今回完成させたのは「小さな命の意味~大川小語り部10年~」と題した23分30秒の作品。作品で取り上げた佐藤さんは卒業を1週間後に控えていた6年生だった次女みずほさん(当時12歳)を亡くしている。「ここには町があり、生活があり、命があり子どもたちがいた」、「命は戻ってこないが、未来にとって意味のある出来事にしたい」。学校を背に、佐藤さんは語る。事故検証委員会の内容や集団移転住宅の状況、行方不明者捜索現場の様子など10年間にわたる映像も収められている。

 作品の編集に携わった4年生のゼミ生10人は、震災10年目に合わせて石巻市を訪問し、新たな映像素材を集める予定だった。しかし新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言発令などで急きょ断念。制作中止も考えたが、栃窪教授が代表で現地を訪問し、最新状況を取材した。今年1月から編集作業などに取りかかり、4月7日に完成した。

 音声担当の光田早耶香さん(21)は「先輩の積み重ねた思いもあり、何としても作り上げたかった」と振り返る。ディレクターの宇治原千尋さん(21)は「直接取材をしていない分、何度も素材を見返して分かりやすく編集した。10年を経て震災を知らない子たちも増え、この作品が震災を伝える一助になってほしい」と願う。

 児童・教職員84人が犠牲になった旧大川小を巡っては、宮城県と石巻市を相手に一部遺族が損害賠償訴訟を起こし、県と市に賠償を命じた仙台高裁判決が19年10月、最高裁で確定している。作品では佐藤さんの思いと共に、この訴訟にも触れ、作品の最後に「仙台高裁の確定判決では、安全な避難場所を決めていればこうした悲劇は起きなかったと厳しく指摘している」とナレーションで伝えている。

 エンディング曲には、阪神大震災をきっかけに生まれた、神戸市の元音楽教諭、臼井真さん(60)が作詞・作曲した復興応援歌「しあわせ運べるように」を使用した。作品は「あいち国際女性映画祭2021」と「地方の時代映像祭2021」への出品を予定。栃窪教授の研究室ホームページ(https://tochikubo.ci.sugiyama-u.ac.jp/)から閲覧できる。

【東日本大震災】

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