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お粗末すぎる事実確認 高市氏が「敗戦説」にこだわる理由

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臨時国会開会に伴い、掲げられた日本国旗。自民党の「保守団結の会」が、刑法を改正し、新たに日本国旗損壊罪を新設しようとしているが、党内にも反対論は強い=国会前で2019年8月1日午前6時59分、玉城達郎撮影
臨時国会開会に伴い、掲げられた日本国旗。自民党の「保守団結の会」が、刑法を改正し、新たに日本国旗損壊罪を新設しようとしているが、党内にも反対論は強い=国会前で2019年8月1日午前6時59分、玉城達郎撮影

 気になる話を耳にした。自民党の議員連盟「保守団結の会」が今国会での実現を目指す「日本国旗損壊罪」の新設について、である。なるほど現在の刑法には、日本国旗を破ることなどを罰する条文はないが、同会のリーダー格、高市早苗前総務相らはその理由を「法務省刑事局は『日本が敗戦国だから』と説明している」と主張するのだ。ちょっと待ってほしい。刑法が作られたのは1907年。「敗戦」は関係あるの? 法務省に確認すると事態はおかしな方向に……。【吉井理記/デジタル報道センター】

「自民党法務部会長が法務省に確認した」

 国旗損壊罪については2月20日付毎日新聞デジタル(https://mainichi.jp/articles/20210219/k00/00m/010/211000c)で詳しく報じた。自民党内の保守議員や民族派の大物も反対する問題だらけの法案である。

 ざっくりおさらいすると、刑法は92条で、侮辱目的で外国の国旗を破ることなどを罰する「外国国章損壊罪」を定めているが、日本国旗に対しては同じような規定はない。諸外国には自国国旗の損壊罪がある。だから日本も刑法を改正し、日本国旗損壊罪を作ろう――というのが「保守団結の会」の主張だ。同会顧問の高市氏らが1月、下村博文政調会長に今国会での法案提出を要請し、下村氏も賛同している。

 さて、なぜ外国国旗の損壊罪があって日本国旗損壊罪はないのか? 

 新しい法律を作る根拠となる事実(立法事実)に関わる核心部分だが、高市氏は自身のホームページの1月27日付コラム(https://www.sanae.gr.jp/column_detail1293.html)で次のように書いていた。

 <日本が、諸外国の法制度と正反対に、「自国の国旗損壊等」については刑罰規定が無く、「外国の国旗損壊等」については刑罰を設けている理由ですが、奥野信亮(しんすけ)法務部会長が法務省刑事局に確認して下さったところ、「敗戦国なので、このような形になり、そのままになっている」ということだったそうです>

「『敗戦国』は関係ありません」

 「敗戦国なので……」というくだりが言わんとすることが「保守」、あるいは右派の言説になじみのない読者には分かりにくいかもしれない。こうした政治家や活動家らに取材してきた記者がかみ砕くとこういうことだ。

 日本は第二次世界大戦の敗戦による連合国軍総司令部…

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