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花谷寿人の体温計

政治や社会の出来事が人々に与える影響を「体温」として読み解く、花谷寿人論説委員のコラム。

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花谷寿人の体温計

福島を担う覚悟

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 葉室麟さんの直木賞受賞作「蜩(ひぐらし)ノ記」は「期限」が重要なモチーフだ。主人公の武士、戸田秋谷(とだしゅうこく)はいわれなき罪を背負い、藩から10年後の切腹を命じられる。

 期限が迫る中、課された役目を黙々と果たしつつ、助命を求めることは潔しとしない。正義を貫くためには、たとえ無実の罪であったとしても命を惜しまぬ武士の矜持(きょうじ)だ。

    ◇

 それまでの歳月をどう過ごし、その時を迎えるのか。10年前に起きた東京電力福島第1原発事故も、いずれ一つの期限が訪れることは分かっていた。

 政府は原発の敷地にあるタンクにたまり続ける汚染処理水を基準以下に再処理して海に放出することを決めた。風評被害を心配する多くの漁業関係者が反対する中での判断である。

 東電の試算によると、2023年3月ごろにはタンクが満杯になるようだ。放出に必要な手続きを考えれば、決断するぎりぎりのタイミングだという。しか…

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