演劇 新国立劇場「斬られの仙太」 変革と人間、巨視的に=評・濱田元子

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 世の変わり目の激流はいや応なく人間をのみ込む。その中でどの道を選び、どう生きるか。そぎ落とされた空間に響く三好十郎の重量感あるセリフが、時代や思想性を超えて迫る。上村聡史の求心力ある演出が長尺を感じさせない。

 劇場の「人を思うちから」シリーズ第1弾は、1934年に初演された初期の代表作だ。

 尊王攘夷(じょうい)を掲げ、急進的に活動する水戸の天狗党。農民から渡世人となった真壁村の仙太郎(伊達暁)は、「民百姓によく響け」との思いで天狗党に加わる。しかし、イデオロギーや大義の矛盾、派閥の内紛といった現実に突き当たる。

 幕末から明治にかけての変革期に翻弄(ほんろう)される農民や浪士の姿は、プロレタリア劇作家から転向した三好自身の葛藤にも映る。だが、80年の時を経て浮かび上がるのは、むしろ三好のマクロな視点が突き刺す現代性だ。国民不在の政治、足元のおぼつかない大衆とポピュリズムの危うさ。すべて今ごとなのだ。

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