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菅首相の米国訪問 中国政策のすり合わせを

 菅義偉首相が米国を訪問し、バイデン大統領と会談する。バイデン氏が対面で会談する初の外国首脳である。日米関係を重視している表れだろう。

 だが、喜んでばかりはいられない。米政権が最初に日本を選んだのは、「米中新冷戦」とも呼ばれる情勢の中で、日米の戦略的な連携を中国に示す狙いがある。

 対中政策ではとりわけ日本への期待が大きいという。首相はそれにどう応えるのか。認識を綿密にすり合わせる必要がある。

 中国と、先端技術開発では競争し、沖縄県・尖閣諸島や台湾海峡での軍事的圧力には対抗し、気候変動問題や感染症対策では協調する。この姿勢は日米とも同じだ。

 問題は、具体化する手法である。米国は「責任」と「力」の分担を日本に求めているという。

 例えば、先端技術だ。人工知能や半導体などの技術力の高さが軍事面の優位性につながるという考え方が主流になっている。

 米政権は技術を保護するために中国への輸出規制を強化している。同時に、対中依存度が高いハイテク製品の原料を独自調達する方針だ。狙いは「脱中国」にある。

 しかし、米主導で中国排除の動きが一方的に進むことには、日本企業に警戒感がある。こうした懸念を伝える必要がある。

 軍事的な「力の分担」では、応じられる要求と、応じられない要求を明確に区別すべきだ。

 軍備拡張する中国に対し、米政権と議会は台湾周辺でのミサイル配備を検討する。候補地として日本も選択肢になる可能性がある。

 日本が軍事協力を拡大すれば地域の緊張が高まる。むしろ、米国の抑止力をてこに、外交力を生かすことが日本の国益につながる。

 新疆ウイグル自治区の人権問題でも、民族根絶を図る「ジェノサイド」と指弾する米国とは温度差がある。率直な議論が必要だ。

 心配なのは、菅政権に体系的な対中政策がないことだ。強硬姿勢を打ち出す一方、停滞する経済協力を前進させる戦略は見えない。

 首相訪米の時期に合わせて気候変動問題担当のケリー大統領特使が訪中する。米国の硬軟織り交ぜた対中政策の一端だろう。

 そうした、したたかな外交戦略を日本も描くべきだ。

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