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カルチャー各分野をどっぷり取材している学芸部の担当記者が、とっておきの話を報告します。インタビューの詳報、記者会見の裏話、作品やイベントの論評など、さまざまな手法で、カルチャー分野の話題の現象を記者の視点でお伝えします。

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元銀杏BOYZチンさん、島に渡り僧侶になる

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記者が訪れた3月末、周防大島では桜が満開だった=山口県周防大島町で2021年3月31日午後4時6分、上村里花撮影
記者が訪れた3月末、周防大島では桜が満開だった=山口県周防大島町で2021年3月31日午後4時6分、上村里花撮影

 人生の全てをささげていた音楽から離れ、東京を後にしたのは生きるためだった――。人気ロックバンド「銀杏(ぎんなん)BOYZ」の元ギタリスト「チン中村」こと、中村明珍(みょうちん)さん(42)は2013年、バンドをやめ、妻と子が住む山口県周防大島町に移住した。現在は、僧侶と畑仕事、その他いろいろ島の何でも屋的存在として活動している。そんなチンさんの島での暮らしをつづった初の著作「ダンス・イン・ザ・ファーム」(ミシマ社)が3月、刊行された。明珍さんに会いに、島へ渡った。【上村里花/西部学芸グループ】

島へ

 「今は、心からうれしいこと、心から笑えることに興味がある。つらくて心を閉ざしている時は、本当に心を揺さぶられないと笑えないし、救われないから」

 それはどう生きるかを問うことでもある。

 東京生まれの埼玉育ち。大学時代からバンドマンとして活動し、ツアーで全国を回った。卒業後はアルバイトをしながらバンド生活を続け、24歳の時、峯田和伸さんが結成した「銀杏BOYZ」のメンバーに。オリコンチャートにたびたびランクインする人気バンドのギタリストとして「バンドが自分の存在の全て」の生活を送ってきた。それから10年。34歳でバンドを脱退、東日本大震災を機に周防大島に移り住んでいた妻子の元へ合流する。当時は人間関係などで行き詰まっていた時期で、とにかく東京から、音楽から離れたかった。

 だから本書は、田舎暮らしの勧めでも、島おこしの話でもない。前半生をかけた音楽を一旦、手放した明珍さんが、…

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