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ネット動画で地域元気に ユーチューバーが紹介 「おもろい大阪」知って=中川悠 /大阪

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「誰でも自己表現ができる時代」と語る市位さん。シニア世代のユーチューバーも支援したいという=大阪市北区で、提供写真 拡大
「誰でも自己表現ができる時代」と語る市位さん。シニア世代のユーチューバーも支援したいという=大阪市北区で、提供写真

 新型コロナウイルス禍の影響で自宅で過ごす時間が長くなり、インターネット上の動画投稿サイト「ユーチューブ」を見る人が増加している。動画への関心度が高まる中、40人以上の「ユーチューバー」を抱え、地方創生や地域活性化に向けた情報を発信している会社がある。大阪市北区に事務所を置く「FunMake(ファンメイク)」。代表の市位(いちい)謙太さん(40)は「生まれ育った大阪の街には無限大の可能性がある。どんどん発信していきたい」と話す。

 若者を中心に見られているユーチューブは、テレビと違って多くはプロではない「素人」が自作の動画を発信している。100万人以上が視聴する人気チャンネルもあり、広告で収入を得る「ユーチューバー」が生まれた。

 市位さんは20歳の時、大きな交通事故に巻き込まれ、九死に一生を得た。「若い時は人生は永続的と錯覚していたが、事故に遭って人生は本当に一回きり、自分の人生をしっかり生きたいと強く感じた」。一念発起し、大学卒業後にアメリカに留学した。その学びの中で強く興味を持ったのは、地域経済の作り方だった。

 2011~19年には大阪市議を務めた。13年の海外視察で米国の起業状況を調査した際、訪問先からユーチューバーの存在を教えられ、斬新な発信方法や内容に引きつけられた。「素人がインターネットで発信している動画を見て、交通費を払ってでも現地を訪れたくなる。ネット上のインフルエンサー(影響力のある人)は『地域を元気にする鍵』になると確信した」と振り返る。

 18年に大阪の庶民グルメを紹介する動画で人気のユーチューバー「ケニチ」さんらと共にファンメイクを設立。旅行系など幅広いジャンルのユーチューバーが所属する。

 例えばケニチさんのチャンネル総再生回数は累計で1億7800万回超。その影響力を地域に生かそうと進めたのが、自治体とのタッグだ。19年に熊取町と情報発信や人材養成を行う包括連携協定を締結し、その後、神奈川県鎌倉市とも協定を結んだ。また、近鉄とは新型名阪特急「ひのとり」の運行1周年に合わせてタイアップ。乗り心地の良さを伝える乗車動画が約20万回視聴されるなど、テレビ番組とは異なる広がりを見せる。

 一方、ユーチューブを通じて発信する人たちが増える中、会社として生き残るためには新しいチャレンジが必要だ。市位さんが見据えているのは、25年の大阪万博。海外のユーチューバー事務所と連携を深めており、「日本だけでなく世界中の人気ユーチューバーがそれぞれの視点で大阪について発信すれば、世界中の圧倒的な数の人に存在を知ってもらえる」と夢を描く。

 「おもろいこと」が集まる大阪の街。「おもろい人」がたくさんいる大阪の街。インターネットの力で世界の人々と手を組み、変わらない大阪、変わり続ける大阪を伝えたい――。生まれ育った街への「誇り」を感じた。<次回は5月21日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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