学校死亡事故調査、国報告1割未満 校舎転落死「子の死、なぜ」

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事故前の2018年1月、家族でドライブに行った際の将顕さん=家族提供
事故前の2018年1月、家族でドライブに行った際の将顕さん=家族提供

 東京都内のある私立中学で、2年の男子生徒が3階の窓から転落する事故が起きた。2018年秋のことだ。男子生徒は半年間の闘病の末に死亡した。全国各地で相次ぐ学校事故を巡り、国は16年、「学校事故対応に関する指針」で、各事案の詳細な検証報告(詳細調査)を蓄積して事故防止に役立てる方針を示していた。しかし、この落下事故は国に報告されていなかった。調べていくと、文部科学省が概要を把握した20年度の死亡事故8件のうち、都道府県教委などから報告された詳細調査もゼロだった。運用が始まった16年までさかのぼっても、5年間で把握した死亡事故計110件のうち、詳細調査の報告は8件で、1割未満にとどまっていた。「息子の死を無駄にしないでほしい」という遺族の声はなぜ届かなかったのか。【宇多川はるか/デジタル報道センター】

元校長「防げたかはわからない」

 男子生徒の名は、将顕(まさあき)さん(死亡時14歳)。所属していたサッカー部やクラスの「ムードメーカー」と友人たちが声をそろえる、よく笑う明るい少年だった。しかし、18年10月、笑顔は一瞬の出来事で奪われた。

 学校側が作成した事故報告書によると、現場は校舎3階。窓枠から室内にせり出したスペース(奥行き16センチ、床からの高さ72・5センチ)があった。

 将顕さんは、この部分に上がって歩いていて、中腰になった際、バランスを崩して窓から転落。約7・2メートル下の1階中庭テラス(コンクリートのタイル製)に落ち、意識不明の重体で都内の病院に運ばれた。当時、窓は全開だったが、遮光カーテンが引かれ、室内からは窓の状況が分からない状態だった。転落防止の観点から、窓には16センチしか開かないようにするためのストッパーが設置されていたが、壊されて機能していなかった。

 将顕さんは頭を強く打ち、頭蓋骨(ずがいこつ)を外して脳にメスを入れる手術を繰り返した。意識は戻らない。髄膜炎や水頭症も発症。それでも、医師と看護師による懸命の治療で命をつないだ。

 家族のほか、友人やその保護者ら、将顕さんと時間を共にした人たちの見舞いは絶えなかった。サッカー部の仲間の一人は、昨日のことのようにうれしそうに思い出す。「(将顕さんの)足の裏をマッサージしたら、ピクッと動いたんです」

 一方、事故から約1週間が過ぎ、父のスマートフォンに当時の校長から電話が入った。「(事故は…

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