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コロナ禍と考古学/下 「退化」でなく技術の「進化」を=奈良文化財研究所考古第二研究室長・神野恵

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「なぶんけんチャンネル」では、発掘調査の様子をドキュメンタリー動画で発信している=ユーチューブから(奈良文化財研究所提供)
「なぶんけんチャンネル」では、発掘調査の様子をドキュメンタリー動画で発信している=ユーチューブから(奈良文化財研究所提供)

 世界中を見渡しても、日本ほど古くから細かく疫病の記録を書き残している国は、なかなか珍しい。免疫は一世代しか継承できないが、人間は本能的に言い伝えや文字に残すことで、「社会的免疫力」とも呼ぶべき抵抗力を、次世代に残そうとするのかもしれない。

 天皇を中心とした国家形成が完成した8世紀。栄華をきわめた平城京には、国内外から人や物資がたくさん集まった。人口密集と活発な海外交流――これは現代社会にも似て、パンデミックの発生条件を備えてしまっていたといえる。

 天平年間の疫病流行は、天然痘とも麻疹ともいわれ、全国平均で人口の4分の1が亡くなったと推算される。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからなくなってきた2020年5月、わたしは奈良文化財研究所(以下、奈文研)のホームページに「古代都市平城京の疫病対策」というコラムを執筆した。発掘調査でみつかった疫病退散を願う呪符木簡や、感染防止のために食器を捨てたゴミ捨て穴などを紹介した。コラムの内容に合わ…

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