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熊本地震から5年 災害弱者守る対策さらに

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 熊本地震から5年がたった。最大震度7の揺れが2度にわたって襲い、276人が犠牲になった。

 崩落した熊本県の阿蘇大橋に代わる新阿蘇大橋が先月開通した。復興が進む一方で、400人以上が今なお仮設住宅での生活を余儀なくされている。

 忘れてはならないのは、震災関連死が犠牲者の8割に上ったことだ。その大半は持病のある人で、特に高齢者が目立った。

 地震では命を落とさなかったものの、ストレスから病気を悪化させた例が多い。家の倒壊を恐れて狭い車内で避難生活を送るうち、体調を崩した人もいた。

 災害時には、特別な配慮が必要な高齢者や障害者らを受け入れる福祉避難所が開設される。バリアフリーの公共施設や福祉施設が、自治体の指定を受けている。

 だが、熊本地震では、指定施設やその職員が被災して開設できなかったケースが相次いだ。大勢の一般避難者を受け入れたために、本来の役割を果たせなかったところもあった。

 災害弱者を守ることは全国的な課題だ。

 多くの自治体で、福祉避難所として利用できる施設が不足している。このため、配慮の必要な高齢者らが一般の避難所へ行くことをためらって、車中泊を選ぶ事態が想定される。

 毎日新聞のアンケートでは、都道府県庁所在地のうち、住民がどこで車中泊をしているかを把握する体制が「構築できている」と答えたのは11市だけだった。

 これでは、支援物資を届けたり、医療を提供したりするのに支障が出かねない。

 新型コロナウイルス禍で、避難所の「3密」防止も求められている。自治体は、災害弱者対策を点検し直す必要がある。

 まず、避難時の支援を必要とする人の数を調べなければならない。福祉避難所が足りなければ、一般の避難所でも介護や看護ができるよう環境を整備すべきだ。

 民間団体との連携も重要となる。地震の後、壊れた自宅にとどまったり、車中泊を選んだりした人を取り残さずに、支援の手を差し伸べなければならない。

 関連死を防ぐ体制を整え、一度は助かった命を守り抜きたい。

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