人権重視は不買運動標的に ウイグル綿花巡る衣料品大手の苦悩
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中国・新疆ウイグル自治区での人権問題への対応を巡り、グローバルな衣料品大手企業が苦境に立たされている。企業活動や投資行動について環境や人権問題を重視する国際的な流れと、ナショナリズムを強める中国の国内市場の重要性との間で、板挟みになっているためだ。
中国メディア、激しい批判展開
ことの発端は、国際的な人権団体などが、高級綿の産地である新疆ウイグル自治区で、ウイグルなど少数民族が強制的に綿摘みなどの労働に従事させられていると指摘し始めたことだ。環境や人権に配慮した綿花栽培の支援や認証を行う国際NGO「ベター・コットン・イニシアチブ」(BCI)は2020年3月、新疆産の綿について「現在の環境では、信頼のできる認証事業が実施できない」として、このシーズンについては認証を行わないと発表した。
さらに同年7月には、人権団体や在外ウイグル人の団体が合同で「強制労働など人権侵害が行われている疑いがあり、現地でその有無を確かめるための信頼できる手段がない以上、大手衣料ブランドは新疆地区をサプライチェーンから外すべきだ」などと主張する声明を出した。こうした流れの中で、複数の大手衣料ブランドが「新疆産の綿は使わない」などとする声明を自社ホームページなどに掲げるようになった。
背景には、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取った「ESG課題」の重視を機関投資家に求める「責任投資原則」(PRI)の広がりがある。もとは06年に当時の国連事務総長、コフィ・アナン氏が提唱した考え方で、その後、国際社会に広がった。
気候変動など環境問題に関しては中国政府も積極的だが、問題は「社会」の分野に人権が入ってくることだ。
PRIに賛同して署名した機関投資家のリストは公表されており、4月現在で世界の3800以上の投資機関の名前が挙げられている。50以上の機関投資家が3月下旬、新疆産の綿などを使っている疑いがある40社以上の企業に対し、詳細な情報の開示を強く求めるなど、ウイグル問題で具体的な動きも出始めている。
さらに米英やカナダ、欧州連合(EU)は3月下旬、新疆での人権侵害に関与したと…
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