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こだわりの一品

世界各国・地域には独自の文化がある。駐日大使や公使らは自国のどの「一品」にこだわりを持っているのか。その魅力を紹介する。

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「イエ」と呼ばれるブラウス ルーマニア大使も愛用の伝統衣装

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ルーマニアの民族衣装であるブラウス「イエ」を着たタティアナ・ヨシペル駐日ルーマニア大使=東京都港区で2021年3月29日、日下部元美撮影
ルーマニアの民族衣装であるブラウス「イエ」を着たタティアナ・ヨシペル駐日ルーマニア大使=東京都港区で2021年3月29日、日下部元美撮影

 ゆったりと余裕のある袖に、胸や腕の部分に赤や青の繊細な刺しゅうが施されたブラウス。ファッションに関心を持つ人ならば、一度は目にしたことがあるだろう。「実はルーマニアの民族衣装『イエ』からインスピレーションを受けたものなのです」。タティアナ・ヨシペル駐日ルーマニア大使は、自身もブラウスを着ながらその魅力を語ってくれた。【日下部元美】

 ルーマニアは民族衣装が地域ごとに異なり、イエも刺しゅうの色や柄などに違いがある。ビーズを縫いつける場合もあるが、基本形は胸元に刺しゅうが川の字に入り、腕には「アルティザ」という複雑な刺しゅうが施されている。現在、同様の民族衣装があるモルドバと協力して、アルティザが施されたイエの世界遺産登録を目指している。

 「イエは私たちの伝統文化であり、日常(の洋服)でもあります」。祝い事や教会に行く際に着る伝統的なイエは非常に高価だが、比較的安価なものは日常的なファッションとして親しまれている。「軽くて着心地が良く、今、私が着ているように仕事着に合わせても、ズボンと一緒に着てもすてきです」

 大使が「生活遺産」と語るイエは、多くのルーマニア女性にとって家族との思い出が詰まっている。「母は私とおそろいの服を着るのが好きで、イエを注文する時は、必ず子どものサイズも頼むのです。一緒に着て、よく写真を撮りました」と幼い頃を振り返る。日本の着物のように親から譲り受けることもあり、大使も中部シビウで母親が買った3着のイエを譲ってもらった。シビウがある地域では黒い刺しゅうが特徴だという。

美の巨人も魅惑

 イエは各国の芸術家たちも魅了し、フランスの巨匠アンリ・マティスが描いた「ルーマニアのブラウス」は自身の代表作の一つだ。近年はファッション業界でも注目され、イエに似たデザインの服が出回るようになったが、ルーマニアから着想を得たものだと知る人は少ないといわれる。

 大使は「最近、ファッションのデザインで特定の文化から影響を受けた場合、その発想元を…

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